§14 魔王に立ち向かうのは勇者だけではない
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なのだ。神殺しの眷属の死亡は、絶対に黎斗と欧州に禍根を残す。最善手は一人でのここからの離脱。それが敵わぬ今、次の一手は生きてここから抜け出すこと。幸い相手は勘違いしている。今エルが黎斗を呼び出しても己の契約した人間を呼び出した、と誤解させられるはず。それに、賭ける。
「!!」
風が吹いた。遠くにいても、相手の下へ駆けつけることのできるウルスラグナの力の一端。ただその使用者は護堂ではない。友愛の神アーリマンの権能でその権能を一時的に拝借した黎斗だ。両手にビニール袋を持つ、という戦場に似つかわしくない姿で現れた彼は周囲の様子を素早く確認する。
「今度は買い物帰りの民間人? ……本気を出す気が無いのなら、出させてみせようか!」
ドニの剣が、エルへと放たれる。神速で振るわれた一撃は、黎斗の左腕に阻まれた。出血しながらもしっかりと握り締めた手は剣の些細な動きも許さない。ドニの瞳が驚きで僅かに見開かれる。
「……へぇ」
「馬鹿な。有り得ない……」
感嘆する魔王。呆然と呟くエリカ。彼の王の剣を見切るような芸当を出来る人間が、この世に果たして何人いるのだろうか! まして対峙しているのは、自分たちのクラスメート。彼がカンピオーネだったとしても、自分たちと年齢はほとんど変わらない。エリカは夏休み少し前に赤銅黒十字の力を借りて秘密裏で彼の戸籍調査を行ったことがある。結果、水羽黎斗は幼い頃に両親と死別してはいるものの、生年月日および戸籍に偽造された形跡はない。つまり、彼が権能を簒奪し神殺しとなったのはこの十数年以内の話の筈なのだ。十年いくかどうかの鍛錬で最強の剣士と張り合えるようになると思えるほどエリカは非現実的な思考回路を持ち合わせていない。この事態は、異常だ。
「あなた誰? 僕ら須佐之男命様の眷属に対して恨みでもあんの?」
僅かな隙にエルと念話で相談した黎斗の結論は、須佐之男命の眷属という扱いで強引に誤魔化すこと。ここでドニを殺し闇に葬れば、事態は沈黙するどころか大事になるだろう。カンピオーネ殺害などしてしまえばそれは世界中にあらたな神殺しかまつろわぬ神か、更なる存在が居ることを発信するようなものだ。だから黎斗は神に仕える者と偽りこの身を晒す。ゴタゴタに巻き込まれるだろうが、神殺しとバレるよりは影響はないだろう。護堂の傘下に加わるのも悪くないかもしれない。若き神殺しがどこまで育つのか興味がないわけではないし。神と戦って負けかけても援護は出来なくなるが、雑魚の掃討くらいなら大手を振って出来るようになる。チート剣があればまず敗北はないだろう。
須佐之男命には事後承諾をもらえばいい。そう結論付けて彼に拒否される場合を考えていない黎斗の思考は、事態の楽観視故なのか須佐之男命への信頼故か。
「眷属?」
「そう。
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