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木の葉芽吹きて大樹為す
若葉時代・同盟編<後編>
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単純な物だ。

 ……軽蔑するかな、こんな事聞いたら。
 肩に押し当てていた弟の頭がそっと離れる。ややあって、扉間の秀でたおでこが私の肩に再びくっついた。

「――少し、安堵しました。姉者はいつもオレの先にいて、毅然とした姿しか見せてくれなかったので」
「……言ってくれれば振り返るよ。お前は私の大事な弟だもの」

 幼い頃に良くしてやった様に、その背をぽんぽんと叩く。
 扉間は寝付きのいい子供だったから、そうしてやれば直に眠りに就いてたっけ。

「勘違いしてはいけないのは、お前が抱いているその感情は他人も持っていると言う事だ。抱く愛情が強ければ強い程、その思いは簡単に憎しみに変わる。うちは一族の人々だってそうだろう」

 千手とうちはは長年争い続けて来た。
 詰まる所、その期間の長さの分だけ両一族の間には夥しい数の死者が存在したのだ。

「だからこそ、慰霊祭は一つの区切りとして有効ではないかと、私は思うんだ」

 死者を忘れるのは簡単な事ではない。憎しみを無くす事も難しい。
 積もりに積もった感情は、ほっとけばいつまでも慰撫される事無く心の奥底に沈殿していく。
 ――そして、その感情を抱き続けていれば、更なる悲しみと不幸とを呼び寄せかねない。

「亡くなった人々を忘れる事は許されない。けど、彼らの存在を立ち止まる事の言い訳にしてもいけないじゃないのかな……」

 でなければ、浮かばれない。
 死にたくて死んでいった者などいないだろう。皆必死に明日のために命を尽くし、一族のために命を削ったのだ。

 ――その努力は実を結んで、今の私達へと繋がっている。

 綺麗事かもしれないが私はそう信じたいし、そうして大勢の者達の命を懸けた先にはそれに値するだけの物があると……私は願うのだ。
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