第五話 豚骨ラーメンその八
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「味がよくないとな」
「駄目なのね」
「外見が同じでもな」
美優は少し落ち込んでいる琴乃に話す。
「日本人の作ったサンドイッチとイギリス人の作ったサンドイッチのどっちがいいかっていうとな」
「日本人よね」
「全く同じサンドイッチでもな」
外見がそうであってもだというのだ。
「日本人の作ったサンドイッチの方がいいよな」
「うん。絶対にね」
「あるだろ、商店街に日本人の奥さんとイギリス人の旦那さんがやってる店」
「喫茶店ね」
「旦那さんが作った料理すぐわかるよな」
「味が全然違うから」
曇った顔になって答える琴乃だった。
「同じサンドイッチでも」
「だろ?外見は同じでもな」
「まずいのよね」
「あの旦那さん料理の外見はいいんだよ」
それはだというのだ。
「けれど味がな」
「どうしようもないわよね」
「破滅的な味だからな」
「それで最近あまり酷いって近所でもネットでも評判になったって?」
「で、それでな」
その結果どうなったかというのだ。
「奥さんも旦那さんにはお茶と接待だけしてもらってな」
「それでなのね」
「ああ、旦那さんが店で料理を作ることはなくなったよ」
「いい人だけれどね、あの旦那さん」
琴乃は一応フォローは入れた。
「サービスもいいし」
「だよな。屈託がなくてそれでいて礼儀正しくてな」
「それでもよね」
「ああ。料理の腕はな」
「最凶よね」
最強ではなかった。字が違っていた。同じ読み方でも漢字が違えばそれで意味は全く異なるものになってしまうことの証左である。
「で、あまりに凄くて」
「店の料理禁止になったからな」
「で、外見が悪くても」
「美味ければいいだろ」
確かに料理は見栄えも大事だがそれでも味が第一だというのだ。
「だからね」
「それでなのね」
「食おうな。とりあえずな」
「うん、そうしよう」
笑って話してだ。そしてだった。
五人でそれぞれテーブルに着いて食べ続ける。そして。
景子は琴乃にこう言ったのだった。
「ちょっといいかしら」
「ちょっとって?」
「そう。琴乃ちゃんのラーメン少し食べさせて」
それを見ての話だった。
「そうしていい?」
「けれど」
「いいの。どんな味か食べさせて」
彼女と美優の話を聞いてその上で興味を持っての言葉だ。
「いいかしら」
「こんな外見でも?」
「いいのよ。味をね」
その味を知りたいというのだ。
「食べさせて」
「それじゃあ」
小さな御飯用の茶碗を出してそこにラーメンとスープを分けて入れる。それからだった。
景子は茶碗の中のそれを食べてみる。それからこう答えた。
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