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万華鏡
第五話 豚骨ラーメンその三
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「五人でしないとね」
「だから今もなのね」
 今度は里香が言う。
「私達も買い物をしてから」
「そう。出来る限りのことをしてね」
「皆でやっていかないと」
「バンドってやっぱり」
 景子はバンドの話もした。
「皆でやるからね」
「それに五人だから、私達は」
「そう。五人でやらないとね」
 駄目だというのだ。
「そう思うけれど」
「うん、私もね」
 そしてだ。それは琴乃もだった。
 そのうえでだ。こう言うのだった。
「五人じゃないとね」
「琴乃ちゃんもよね」
「うん。私あれなのよ」
 琴乃は微笑んでまた言う。
「傍に誰かいないと」
「駄目?」
「そう。駄目みたいなの」
「ああ、つまりあれね」
 琴乃と里香のやり取りを聞いて彩夏が言ってきた。
「琴乃ちゃんって寂しがりなのね」
「うん、実はね」
「やっぱりそうなのね」
「子供の頃からなの。一人になると」
「我慢できない?」
「自分のお部屋だと違うけれどね」
 しかしそれ以外の場所ではどうかというのだ。
「それでもね」
「そうなのね。寂しいの苦手なの」
「皆がいないと駄目なの」
 またこう言う琴乃かった。
「どうしてもね」
「じゃあ皆で食べればいいわね」
 彩夏は琴乃の自分との話を聞いてそれで言った。
「そうすればね」
「うん。食べる時もね」
 皆がいてこそだというのだ。確かに琴乃は寂しがりだった。だが彼女はそれ以上にいいものも持っていた。
 そのいいものをだ。ここで言うのだった。
「あと。皆と一緒にいると」
「だから寂しくないのよね」
「皆の笑顔が見られるじゃない」
 こうも言うのだった。
「だから皆と一緒にいたいの」
「皆の笑顔が見られるから」
「うん、それでなの」
「そうなのね。じゃあ今からラーメンを食べてね」
「うん、それじゃあ」
 こうした話をしてだ。そのうえでだった。
 四人は美優の家に入った。そこはマンションの四階だった。家のチャイムを鳴らすとすぐに青のズボンと赤い上着の美優が出て来た。 
 美優は四人を見てまずはこう言った。
「いらっしゃい。じゃああがってくれよ」
「お邪魔します」
「失礼します」
 四人はそれぞれ挨拶をしてから中に入った。そこは中々広く清潔だった。特にキッチンは立派なものだった。
 白と銀のそのキッチンを見てだ。まずは里香が言った。
「奇麗ね」
「ああ、掃除はいつもしてるんだよ」
「それでなの」
「親父もお袋も奇麗好きでさ」 
 美優はキッチンに入りながら里香に返す。
「それでなんだよ」
「ご両親の影響なの」
「今は二人で休日の一日旅行に出てるからさ」
 いないというのだ。
「安心してくつろいでくれよ」
「そうなの。ご両親は今日はいないの」
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