第四話 緑の葉その七
[8]前話 [2]次話
「かなり違うよね」
「コーラスって思った以上に大きいんだな」
美優はかなり考える顔になっていた。そのうえでの言葉だった。
「そうなんだな」
「うん。私もね」
「琴乃ちゃんもコーラスは添えものって思ってたんだな」
「実はね」
そう考えていたとだ。琴乃は実際に答えた。
「そう思ってたけれど」
「違ったな」
「コーラスって歌も演奏もかなり映えさせるのね」
「隠し味、いや」
美優は言ったその瞬間に己の言葉を訂正した。
「主な調味料だよな」
「それになるのね」
「あれだよ。コーラスは味噌とか醤油と同じだよ」
「そこまで大事なの」
「うちのバンドじゃみたいだな」
プラネッツ、このグループにおいてはそうだというのだ。
「そう思えてきたよ」
「ううん、お醤油と同じっていうと」
和食について考えての言葉だ。
「あれね。メインなのね」
「歌に演奏と同じでな」
「そこまでなるの」
「だから他の歌にもどんどん入れていこうぜ」
美優は今度は笑って述べた。
「そうしたら味も豊かになるからな」
「そうね。ただ味付けはバランスが大事よ」
景子は笑ってこうも言った。
「お醤油と他の調味料の割合の調整は結構難しいわよ」
「そうそう、私あれなのよ」
彩夏がここでこんなことを言った。
「お好み焼きいつも焼くんだけれど」
「お好み焼き?」
「あれについついソースをかけ過ぎて」
そうなってだとだ。彩夏は自分の楽器を左手に持ち右手の人差し指を肘を曲げた上で前後に振りながら話す。
「辛くなっちゃうのよ」
「辛くなるって」
景子はそう聞いて首を捻ってこう彩夏に言った。
「マヨネーズは?」
「おソース好きだから」
「マヨネーズの割合を間違えて」
「どうしてもそうなるのよ」
「そうなの」
「そこに紅生姜も好きだから」
薬味の話にもなり。
「青海苔や鰹節よりも多くなって」
「辛くなりそうね。確かに」
「ええ。いつもそれで少し辛いなって思いながら食べるの」
「バランスが大事ってことね」
里香は彩夏の話を聞いてこう述べた。
「つまりそういうことよね」
「ええ、そうよね」
「歌もそうなのね。コーラスが必要でも」
「コーラスする場所を間違えたり多過ぎたら」
どうなるかというのだ。
「元がどんなにいい歌でもね」
「そのよさを殺してしまうわね」
「そこが難しいわね」
「そうね」
彩夏も真面目な顔で頷く。そうしてだった。
今回リードヴォーカルを務めていた琴乃が言ってきた。他の四人に対して。
「もう一回歌ってみる?」
「もう一回?」
「この曲歌うの?」
「うん、そうしよう」
こう笑顔で言ったのだった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ