第四話 緑の葉その二
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「桜の散ったことを歌う歌ね」
「何か。琴乃ちゃんの話を聞いただけだとあれよね」
「あれよねって?」
「悲しい曲になりそうね」
彩夏は本能的にそう感じ取っていた。
「それってね」
「やっぱりそう思うよね」
「うん、そう思うけれど」
「実際にそうなると思うよ」
その通りだとだ。琴乃も答える。
「私もね」
「そうよね。やっぱりね」
「明るい曲じゃないけれど」
琴乃はその感情を顔にも出して話す。
「どうかなって思ってね」
「明るい曲じゃなくても」
「うん、どうかな」
琴乃は彩夏の目を見て問うた。
「そうした曲があってもいいよね」
「そうね。それは」
一呼吸置いてそれからだった。
彩夏は深く考える顔でだ。こう琴乃に答えた。
「明るくて楽しい曲ばかりじゃないし。実際に」
「だからどうかなって思ってね」
「いいと思うわ.私はね」
笑顔で頷く彩夏だった。他の面々も無言だがそれぞれ笑顔で頷く。これでおおよその話は整ったと言えた。
だが次の問題があった。その問題はというと。
「ただ。問題はね」
「誰が作詞して作曲するかだな」
彩夏に続いて美優が言う。
「それが問題だけれどな」
「誰がするの?って言っても」
ここでまあ言う彩夏だった。
「皆作詞作曲はじめてよね」
「うん、私もそうしたことないから」
「私も」
まずは琴乃と里香が答えてきた。
「だって。バンドだってはじめてだし」
「演奏もはじめたてだし」
「作詞とか作曲なんてね」
「とても」
「そうよね。私もだし」
彩夏自身もだった。このことは。
「難しいわよね」
「私もそうしたことは」
「あたしも実はな」
景子も美優もだった。本当に五人共そうした経験はなかった。
それでだ。今度はこうした話になったのだった。
「具体的にどうして作曲するんだよ」
「作曲?」
「だろ?作詞はまだ何とかなるだろ」
それはだ。まだいけるかも知れないというのだ。
「それはな」
「そうね。とりあえず皆詞を書いていって」
「それでできるだろ」
「うん、何とかね」
「出来不出来はともかくな」
それはいけるというのだ。
「ただ。それでもな」
「作曲はなの」
「それどうするよ」
美優は首を捻りながらメンバーに問うた。
「その辺りな」
「作曲って楽譜に音符書いていくのはわかるけれど」
それはだとだ。景子が言う。
「けれど。具体的には」
「ただ楽譜を書いても出来る筈ないしな」
美優はまた言う。考える顔のままで。
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