第四話 緑の葉その一
[8]前話 [2]次話
第四話 緑の葉
入学して暫くするとだ。入学式で満開だった桜達が。
散っていきなくなってしまった。琴乃はクラスの窓からその花びらがなくなった桜の気を見てこう里香に言った。
「寂しいね」
「桜がなくなったから?」
「うん、何かね」
珍しく寂しげな顔での言葉だった。
「毎年のことだけれどね」
「桜ってそうよね」
里香もだ。琴乃のその寂しげな顔に応えて言う。
「とても奇麗だけれどね」
「すぐに散っちゃうよね」
「そうなのよね。本当に」
「それで散り方も」
いつも見るだ。それもだというのだ。
「はらはらって散って。悲しいよね」
「そうなのよね。奇麗だからこそ余計に」
「私ね。桜好きなの」
琴乃は里香に顔を向けて言った。
「大好きなの」
「琴乃ちゃんもなの」
「うん、大好きなの」
そうだというのだ。
「そうなの」
「桜嫌いな人はいないから」
こうも言う里香だった。
「私もね」
「そうよね。景子ちゃん達もよね」
「絶対にそうだと思うわ。ただね」
「ただ?」
「桜が散って悲しいのなら」
それならというのだ。里香は琴乃にこう提案してきた。
「それ、歌にしない?」
「歌になの」
「そうしない?私達軽音楽部だし」
「ううん。桜の歌なの」
「美優ちゃん達にも提案してみてね」
「それで五人でお話して」
「そうして作曲してみる?それはどうかな」
里香の提案を聞くとだ。琴乃は少し考える顔になった。
それからだ。こう答えたのである。
「悪くないかな」
「お花の歌も多いしね」
「特に桜の花はね」
日本の国花だけはある。それだけに誰もが歌にして歌っているのだ。これは古来より行われてきていることである。
「だから。私達もね」
「そうね。それじゃあ」
「皆に提案してみてね」
こうして二人で桜の歌を作ってみようという話になった。それでだ。
二人は部活でトレーニングの後で作詞作曲にかかる前にだ。三人に対して提案したのだった。
「桜の歌にしない?」
「そうしない?」
「桜?」
二人の提案を聞いて最初に声をあげたのは彩夏あった。彩夏は目をしばたかせてその上で二人に対して問うた。
「桜って。今?」
「そう。今ね」
「曲にしない?」
「ううん。けれど」
二人の話を聞いてだ。彩夏は難しい顔になって言った。
「桜もう散ったわよ」
「散ったからなの」88
それでだとだ。琴乃は彩夏に答える。
「それでなの」
「散ったからって」
「そう。散ったから悲しいって思ってね」
「ううん、それでなの」
「どうかな。それで」
琴乃は彩夏の顔を見てまた問うた。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ