第二話 はじめての演奏その五
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「じゃあいいわ」
「向き不向きってあるからね」
「リーダーに向いてるっていうと」
琴乃も美優を見て話す。
「やっぱり美優ちゃんよね」
「琴乃ちゃんもそう思うのね」
「うん。じゃあ私はムードメーカーでいくから」
「ただ。ちょっと歌ってみて」
ここでだ。景子はその琴乃にこう言ってきた。
「歌。ちょっとしてくれる?」
「歌?」
「そう。皆もそれぞれ歌ってみて」
他のメンバーにも言う景子だった。
「私も歌うから」
「じゃあね」
「歌うか。ちょっと」
「そうするね」
里香達三人もだった。そうしてだった。
琴乃をはじまりとして五人でそれぞれ歌ってみる。それからだった。
美優がだ。琴乃を見て言った。
「琴乃ちゃんでいいんじゃないのか?」
「そうよね。私もそう思うわ」
「私もね」
景子と彩夏も美優のその言葉に頷く。
「ヴォーカル、メインはね」
「琴乃ちゃんがいいと思うわ」
「私も。琴乃ちゃんが一番歌が上手だし」
里香も琴乃を見て言う。
「それにダンスだっていいし」
「あれっ、私ダンス踊ってないけれど」
「自然と身体が動いてたの」
里香は踊っていないという琴乃にこう話した。
「だからね。そういうのを見てね」
「私が。その」
「そう。それに琴乃ちゃんよくムードメーカーって言われるって言ったわよね」
「うん、そうよ」
「それならね」
それならだというのだ。
「琴乃ちゃんがメインヴォーカルでいいと思うわ」
「けれどバンドでヴォーカルっていったら」
「そうよね。看板よね」
「一番目立つけれど」
「それでいいの?」
琴乃は驚きを隠せない顔で里香、そして他のメンバーにも尋ねた。
「本当に」
「だから。お願いするね」
また言う里香だった。
「それで」
「ううん、皆がいいって言うんなら」
琴乃は他の三人の笑顔、里香以外のそれも見てだった。そのうえで彼女も笑顔になって言ったのである。
「私やらせてもらうね。ただね」
「ただ?」
「うん、私だけじゃなくてね」
こう言うのだった。美優に応えながら他の三人にもだ。
「皆それぞれ歌わない。だってバンドって皆でやるものだから」
「あたし達もか」
「うん。歌わない?」
これが琴乃の提案だった。
「皆で」
「けれどな。ヴォーカルは琴乃ちゃんだからな」
ギター兼任でだ。美優は難しい顔になって話すのだった。
「あたし達四人ってなるとな」
「駄目かな」
「どうしたものだろうな。それって」
「あっ、それならね」
ここで里香が知恵を出してきた。
「琴乃ちゃんは確かにメインヴォーカルだけれど」
「それは変えないでなんだな」
「そう。私達も時々歌う曲を用意すればいいのよ」
「ああ、曲によってか」
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