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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#19 "an indelible memory"
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【11月1日 PM 3:52】
Side 張
「バラライカの配下を殺し、そしてアンタの部下をも殺した。
つまり今回の一連の事件は全て俺が引き起こしたものだと、言いたいわけか。
今日わざわざここまで来たのはあれか?
俺の首に縄でもつけて、見せしめに街中を引きずり回しにでもしたくなったからか」
頭の上から降ってくるようにゼロの声が届く。
こいつの声も久し振りに聞くが、相変わらずの調子だな。
淡々としていて何の感情も乗せていない。
だからこそ、こいつの声を受け取る側は色々考えちまう。さて、こいつは何を考えているだろう、とな。
「で?
この先は一体どんな展開が予定されているんだ?
ダッチに俺の首を差し出させるか。
それともバラライカの前にでも引きずり出す腹か。
ふっ。
どちらにせよ、わざわざあんた自ら泰山府君の使者を努めてくれているわけだしな。
俺もいつの間にか大物の仲間入りをしてたという事か。
自分じゃ全く気付かなかったよ」
この狭い室内に響くのはただゼロの声のみ。
俺とダッチは俯き、貝のように黙りこみ相槌一つ打たない。
俺の視界からはダッチの両膝とその上に置かれた手しか見えないが、今顔を上げれば珍しいものが見れるだろう。
ダッチもこの街じゃあ古強者の一人と言っていいが流石にこんな状況ではな。
「待て、ゼロ。
安っぽい挑発なんて、らしくねえ真似するんじゃねえ。
大体いくら何でもお前がホテル・モスクワと三合会に喧嘩売るなんて、さすがに無理がありすぎるだろ。張の旦那ならそれくらい分かるはずだ」
とうとう黙っていられなくなったか、ダッチが身を乗りだし堰を切ったように話し出す。 サングラス越しに見えるダッチの拳は力強く握り締められてる。
まあ、ダッチの言いたい事も分かる。
確かにホテル・モスクワと、特にバラライカを、
三合会
(
うち
)
を同時に敵に回すような馬鹿じゃないだろう、ゼロは。
ただ、
「別にホテル・モスクワの関係者殺しとうちの身内を殺った奴が同じである必要はないだろう。
バラライカのとこに喧嘩を売る奴がいる、だが正体は不明。
にも関わらず犠牲者は増えていく一方。
こんな機会滅多にあるもんじゃない。"あの"バラライカ相手にここまで出来るなんてな。
コイツは、ゼロはこれを千載一遇の好機と捉えたんじゃないか?
こんな時に三合会にまで被害が出れば誰も無関係とは思わない。
上手く立ち回れば全てを正体不明の誰かさんに押し付けられる」
俺はテーブルに視線を落としながら、自分の考えを伝える。
無論ダッチと、ゼロ。その双方に向けて。
ダッチは膝の上に置いたままの拳を細かく震わせている。その拳は一瞬開きかけたが結局開かれる事はなく、再び固く閉じられてしまう。
ゼロは
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