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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#18 "Walkin\' Dude"
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意様だ。

「上に立つやつが慌てふためいたら、下の連中は不安に感じるだろう。
虚勢を張るのも大事な仕事の内さ。
内心じゃあ狼狽しきりなんで、こうして昔馴染みに救いを求めに来たのさ」

テーブルの上に両足を乗せた旦那が、両手を拡げながらおどけたように宣う。
昔馴染み、ねえ。
旦那の向かい側に座ってた俺はチラリと、壁際に佇むゼロを見る。
俺と旦那、二人のほぼ中間の位置に立つゼロはいつもと微塵も変わらねえ。
腕組みしたまま目を閉じて軽く俯いてる。
旦那も別段気にはしてないみたいだが、俺の方は胃が痛いぜ。街の大物目の前にして、んな態度取られたらよ。
大体馴染みというなら俺よりコイツの方だろうに。
どう考えても本命はお前だろ。ゼロ。
旦那がわざわざ事務所じゃなくて、うちの船を会談場所に指定してくるなんてよっぽどの事だぜ。
おまけに護衛の連中は部屋の外に待機させられて、ここには俺達三人のみ。
ここまでして聞かなきゃいけねえ話かよ。
やれやれ、勘弁して欲しいぜ。

「それで?俺達に一体何をしろと。
悪いが、旦那の疲れを癒してやれるような新作のジョークは仕入れてないぜ」

「ソイツは残念だな。顔の広いお前さんならと思っていたんだが。
出来が良かったら今度の連絡会で、バラライカのやつに聞かせてやろうと企んでたんだが。
ふむ、宛が外れたな」

俺の軽口も軽く避けられちまう。
旦那は変わらず笑顔のままだが、此方はとてもそんな心境じゃねえぜ。
思わず旦那から目を逸らして、テーブルに視線を落とす。

今街はかなりヤベエ事態に陥ってる。最悪といっていいだろう。
もうポップコーンにゃあ火が通っちまってる。後はいつ爆発するかを待ってるってとこか。

しかも今回は中心にいるのがバラライカだ。あれが望めば"また"この街は戦場だ。
しかもあの頃とは違って、この街も随分注目を集めてる。
もし本当にそんな事態になっちまったら、冗談抜きでこの街は地図から消えちまうぞ。
旦那もだからこそ必死なんだろうが……

顔を上げて旦那の様子を確認するが、旨そうに煙草を吸いながら部屋の天井を見上げてふんぞり返ってる。

……向こうから切り出す気はないのか?
そんな余裕見せてるような状況じゃねえだろうに。
まあ、どんな時でも泰然自若を貫き通すってのは張の旦那らしいが、それでも……

「で、誰が殺られた?」

旦那が吐き出す紫煙と俺の溜め息で満たされた空気をかき混ぜる一言は、当然ながら壁際から発せられた。
俺は首を傾けて視線を横滑りさせる。
姿勢は変わらず壁に背中を預けたままだが、目は確りと開かれて旦那に向けられている。

「被害者が三合会(あんたのところ)からも出たんだろ。
身内に火の粉が飛んだんなら、それこそ俺
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