第十一話
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。もう俺はお前の事を息子だとは思わない」
プロポーズから3日後の週末。ネヴィラはエルシャンの家に招待されて彼の両親に会うことになったのだが、玄関に出迎えたポアーチは彼女を見るなりそう言った。
いきなりの親からの反対に、覚悟していたとはいえ自ら選んだ将来の前途多難さにネヴィラが軽い眩暈を覚えていると、ポアーチは続けて言う。
「これからは兄貴と呼ばせてもらいます」
そう言って自分の子供に深々と頭を下げるポアーチに、ネヴィラは意味を理解できず呆然とする。
ポアーチは『9歳にして、こんなクールビューティーを一日で口説き落としたなんてありえない。間違いなくトリマ家の歴史始まって以来の快挙……もしかしてエルシャンって神なんじゃねえ?』と思わずにはいられない。
自らの心の中に湧き上がるエルシャンへの畏敬の念に自然に跪いて頭を垂れてしまうのは必然であり、父と子である前にただ一匹の雄として完全に負けたと自覚した。
思い浮かぶは思春期を迎えて以来の負け戦の数々……それだけで軽く胃の粘膜に穴が開き腹部に痛みが走る。
ポアーチは突如自分を襲った激痛に叫び声を上げる。胃も痛いが、それどころではない痛みに、痛みの元を振り返るとユーシンが彼の尻尾を思いっきり握っていた。
「何を言ってるんですか? あなた」
本来尻尾とはとても繊細なものだ、それを力いっぱい捻りを入れて握られたら痛いに決まっている。だがその痛みを口にする事が出来ないほどポアーチには妻の笑顔が怖かった。
「父さんは冗談が好きな人だから余り気にしないで」
父を物理的にも精神的にも締め上げている母を他所に、さわやかな笑顔で婚約者にフォローするエルシャン。
「とてもユニークなお父さんで……」
「面白いでしょう。父さんは頭の中が時々面白いんだよ」
あくまでもさわやかに笑いながら言葉の刃で己の父を斬って捨てた。
「でも僕達のことで反対してる訳じゃないから、気を悪くしないで下さい」
「いや、気を悪くするなんて、私は罵られても仕方ないと思って来たのだが……」
想像の斜め上を行く展開に戸惑うネヴィラ。
「ごめんなさいね。夫が馬鹿なこと言って驚いたでしょう?」
むしろ驚くのは、泥棒猫と責めてくるのでは思っていたユーシンが自分に好意的な笑顔を向けてくることだった。
「い、いえ。こちらもまだきちんと挨拶もせずに申し訳ありません。改めて自己紹介させていただきます。私はネヴィラ・コリーです。エルシャンさんやウーク君の学校で教師をしていて、ウーク君の担任をさせていただいています」
「では私も改めて、ウークとエルシャンの母親のユーシン・トリマです」
この2人はウークの入学後の保護者会で面識があった。ネヴィラはユーシンの年上とは思えない──ユーシンは26歳。7歳のウークの母親だから2
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