第十一話
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流されるのではなく、時間を掛けて互いに分かり合う事が出来て、もしも……そう自分を納得させる。
「私もあの時はどうかしていた……それに思いっきり打ってしまったが大丈夫だったか?」
「たいした事ありませんよ」
笑って答えるエルシャンだが、打たれた右の頬は赤く腫れ上がっていた。
「すまない。こんなに腫れて……」
ネヴィラは手を伸ばしてそっとエルシャンの頬に触れようとする。
するとエルシャンは腫れてない方の頬も赤く染め、それを見たネヴィラまでも恥じらいを浮かべる。
「仲直りした?」
ウークが2人に尋ねる。
「う、ウークのおかげで仲直りできたよ」
「ああ、君のおかげだ」
「じゃあ、先生と兄ちゃん結婚するんだね」
「なっ!?」
驚きの声を上げたネヴィラは思わずエルシャンの頬に爪を立てていた。
「……ひどい」
エルシャンは四条の爪痕の走る頬を押さえて涙を堪える。
「ねえウーク君。どうして私が君のお兄さんと結婚するんだ?」
エルシャンの抗議を無視して、ネヴィラはウークに問いかける。自分をじっと見据えるその目にはさすがに無敵状態のウークも少し怯える。
「だ、だって兄ちゃんが先生のこと好きだから結婚したいって、だから僕のお姉ちゃんになってくれるんだよね?」
「け、結婚……」
確かにプロポーズとも取れる言葉は貰ったが、誤解しようが無いストレートな結婚の二文字に心が揺れる。
将来は分からない。結ばれて幸せになれるかどうかも分からない。分かっているのは困難が幾つもあるということだけ。だが好きだという気持ちだけは大きくなっていて、嬉しくて仕方がない。
「ウーク! それは兄ちゃんが直接言わないと駄目なんだよ」
「じゃあ、早く言って」
今のウークの頭の中の99%は『先生にお姉ちゃんになって貰いたい』が占めていたので、兄の抗議などどうでも良かった。
「いや、あの……」
先程は勢いに乗って強引に口説いたが、今は気持ちも少し落ち着いてしまい恋愛肉食獣も食後に寛いであくびしている状態だった。そんな状況でプロポーズなど生まれたばかりで膝がプルプルしてるインパラの子供にライオンと戦えと言ってるのにも等しい。
「兄ちゃん……言え」
だが、エルシャンの前には今サバンナなのライオンよりも無敵状態な奴が居た。
「言え」
駄目押しの一睨みがエルシャンへの最後の一押しとなり「結婚してください」の一言を腹の底から捻りだした。
「……はい」
ネヴィラは自分の気持ちを抑える事が出来なかった。この後で自分がどうなるかはわからない。だがどんな結果になったとしても、今自分に向けられている彼の愛を受け入れてみたい。一生に一度だけ女としての自分を優先させて応えてみたい。それがネヴィラの出した答えだった。
「エルシャン
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