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八条学園怪異譚
第六話 海軍軍人その五
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「君達はこの学園の生徒さん達だな」
「はい、商業科の一年です」
「この前入学しました」
 二人はこう答えてからその名前も名乗った、勿論それぞれの家が経営している店のこともしっかりと話した。
 日下部は愛実の家が食堂をやっていると聞いてこう彼女に問うた。102
「カレーはあるか」
「カレーですか」
「そうだ。食堂なら洋食もあるな」
「ええ、カレーもあります」 
 愛実は正直に答えた。
「それなりに自信もあります」
「そうか。カレーはいいな」
「人気メニューですよ」
「そうだろうな。カレーはな」
「カレーにトンカツ、あと肉じゃがも人気です」
 愛実は日下部にこう話す。
「うちのお店は特にトンカツが人気ですけれど」
「あれも美味だな」
「カツカレーとかもあります」 
 これまた定食屋の定番メニューだ。プロ野球選手だった千葉茂が好物であるカレーとカツレツを一緒に食べようと考え出来たメニューである。
「これも人気があります」
「そうだろうな。カレーはいいものだ」
 日下部はカツはともかくカレーにはかなりのこだわりを見せていた。
「カレーでその部隊の食事がわかる」
「何かね」
「そうよね」
 その彼の言葉を聞いて愛実と聖花はお互いに顔を見合わせて話をした。
「日下部さんってカレー好きみたいね」
「凄いこだわりがあるけれど」
「先程話を出した肉じゃがにしてもそうだが」
 日下部はその二人に対してこう答えた。
「カレーは海軍から広まったのだ」
「インドからじゃなかったんですか」
「インドは当時イギリスの植民地だった」
 あくまでかつてはだ。それが独立したのは歴史にある通りだ。
「そのイギリスから日本に伝わったものだ」
「へえ、カレーってそうだったんですか」
「そうだ。イギリス海軍から日本海軍にな」
「肉じゃがも」
「肉じゃがは話せば長くなるがおおむねそうだ」
 ビーフシチューから肉じゃがになったことは日本人の料理のアレンジ故だ。この話には東郷平八郎が関わっている。
「カレーはイギリス海軍の将兵がパンにつけていたカレーシチューを御飯に合わせてアレンジしたものなのだ」
「あの料理のまずいっていうイギリスから、ですか」
「お料理を勉強したんですか」
 愛実も聖花もイギリスの料理についてはよく知っていた。
「何か意外ですね」
「あの国に料理を教わったなんて」
「信じられないだろうが事実だ」 
 日下部もこう言う。
「私もイギリスに行ったことがあるがだ」
「やっぱりお料理酷いですよね」
「噂には聞いていますけれど」
「日本に店を出せば違う意味で評判になる」
 美味いという意味ではないことは間違いない。
「調味料はほぼ使わない。塩と酢だけだ」
「そんなの今時誰もしないわよね
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