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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#14 "qualification of hero or heroine"
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当に見えなかった。
さっきまで確かに彼女はただ立っていただけだ。両手を脇に垂らして目を細めながら俺の話を聞いてたはずだ。それがいつの間に、
"いつの間に銃を抜いて俺の顔の真ん前に突き付けてるんだ?"
全身から急速に熱さが引いていく。
背中に張り付いたままのシャツからは氷のような冷たさが伝わってくる。
開いていた口を閉じる事も出来ない。何か言葉を発する事も出来ない。
俺はただ自分に向けられた黒々とした
孔
(
あな
)
を見つめる事しか出来ないでいた。
「何か、言い遺す事は?」
孔の向こうから言葉が届く。
言い遺す事………
まだ、言ってない事………
彼女に言っておきたい事………
俺は………
俺は………
俺は………
Side ゼロ
やれやれ。まさか本当にやるとはな。
ロック。前から思っていたが、お前も大概ギャンブラーだな。
それもちょっとヤバいタイプのな。
自分の命を
賭け
(
ベット
)
する勝負なんて、人生で一回もあれば充分だと思うがな。
俺もよく何考えているか分からん。不気味だ、などと言われるがお前も相当なものだよ、ロック。
まあ、俺がけしかけた部分もあるわけだし結末だけは見届けてやらんとな。
お前の『本気』のギャンブルの結末を。
ただ、レヴィの奴は気付いているのかな?
まあ、アイツもプロだ。気付いてはいるのだろうが、その上でああいう態度に出たんだろう。
だとしたら、いよいよ俺の出番はないな。
それに今回の舞台はどう考えても、あの二人が主役だろ。
脇役がしゃしゃり出るものでもないな。
大人しく舞台脇から見ているとしようか………
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