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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#14 "qualification of hero or heroine"
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顔に浮かべながら、ロックは話し続ける。
「覚えてるよな?
俺が自分の会社に見捨てられた時の事。
皆は慰めも同情もしてくれなかった。当たり前だよな。あの時はそれどころじゃなかったんだ。
お荷物にしかならない日本人の事なんてどうでもいい。まず、 自分達の命の心配をしなきゃいけない。あの時はそういう状況だった。
結局俺の無茶苦茶な提案が上手くいって何とかなったわけだけど。
あの時思ったんだ。
俺は主人公にはなれないんだなって。
俺はみっともなく狼狽えてんのに、みんなは落ち着いててさ。
あの提案自体は俺が自分で考えたものだけど。 あれだってゼロが隣にいて、相手をしてくれたからなんだ。自分一人じゃとても思い付けなかったよ。
日本の漫画でもさ、そういうの良くあるんだよ。
普段駄目な奴がさ、偶々何かを思い付くんだ。そのアイディアを上手く利用してさ、敵を倒したりするんだよ。
………主人公がね。
こんな考えなんて君は笑うんだろうね。
生き死にが懸かってる場面で主人公も糞もあるかと。現実と漫画を混同するんじゃねえ、 馬鹿かテメエは。
これくらいの事は言われそうだよね。君達みたいに死ぬとか、戦うって事が絵空事じゃなくて、本当に身近にある人達からすれば、そうだろうね。
そんな事はガキの戯言だと。下らねえ愚痴だと、そう言うんだろうね。でもな、レヴィ」
……ロックの雰囲気が少し変わる。心なしか、視線が鋭くなったか。
良いね、悪くない。
アタシは細めた目を少し見開いて、奴の言葉の続きを待った。
「理想を語る事はそんなにいけない事か。
空の上の手の届かない場所に憧れる事は馬鹿のする事か。
毎日下ばかり向いてテメエの足の一歩が踏み出す先ばかり見て歩いていくのが、正しいってのか。
俺は確かに主人公なんかじゃない。なれるとも思わない。
仮にこの世界が物語だとしたら、俺は脇役もいいところだ。
お前にビビって、敵にビビって、仲間に助けられて。たまに意見してみたところで、撃たれたくないなら黙ってろ。そう言われて何も言えなくなるような情けない脇役さ」
ロックが首もとに手をやり、ネクタイを引き抜く。そのままネクタイを手に持ちながら、 アタシの方へ一歩近付く。
アタシは組んだままの腕を降ろし、くわえてたタバコを地面に吐き捨てる。
首をさっきまでとは反対方向に倒しながらロックの目を見る。視る。観る。
「けどな、この世界は物語なんかじゃない。俺は脇役なんかじゃない。
だから言いたい事を言わせてもらう。
俺は平和ボケした日本人? 銃を握った事もない?住んでる世界が違う?生きてきた環境が違う?
現実を知らない。苦労を知らない。死体に同情するな。金の価値を分かってない。アタシに意見するな。お前は黙ってろ
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