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八条学園怪異譚
第一話 湧き出てきたものその十三

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「私そんなのいらないから」
「そんな、私別に」
「慰めじゃないっていうの?」
「そんなの言ってないから」
 自分ではそのつもりはない。だからこう言えた。
「そんなつもりないから」
「本当に?」
「うん。愛実ちゃん本当に可愛いわよ」
 戸惑いはまだ残るが何とか己を落ち着けさせて愛実に告げた。
「だから安心してね」
「だといいけれど」
「それでだけれど」
 愛実を少し落ち着かせてからだ。聖花は今度はこう話した。
「受験だけれどね」
「あっ、それね」
「そう。勉強の方はどうなの?」
「模試の結果を見たら」
 どうかとだ。愛実は少しだけ普段に戻った顔で聖花にその模試の結果について話した。受験生にとっては模試は極めて重要なものだ。
「Aだったわ」
「そう、Aだったの」
「ええ、そうだったわ」
「じゃあ安心できるわね」
「先生にも合格できるって言われたわ」
 このこともだ。愛実は聖花に話した。
「それはね」
「そう。じゃあこのまま」
「勉強してるから。これでも」
 こう言ってもだ。やはり愛実は俯く。聖花と共にいつとどうしてもそうなってしまう。それが最近の愛実だった。それを止められなかったのだ。
「私なりに」
「そうなの」
「やっぱり高校は行きたいから」
「それで高校を卒業したら?」
「わからない。けれど」
「けれど?」
「大学も行きたいから」
 こう聖花に答えたのである。
「八条大学ね」
「そのままエスカーターでなの」
「うん、そうなりたいから」
 こう言ったのである。
「勉強はしていくから」
「私もね」
 聖花は愛実にだ。屈託のない笑顔で応えた。俯いている愛実とh対象的に。
「勉強してるよ」
「模試の結果は?」
「Aだったわ」
 彼女もそうだったというのだ。だが、だった。
「絶対に合格出来るって。いえ」
「いえって?」
「先生に言われたけれど」
 彼女もだ。学校の先生に言われたというのだ。
「推薦で行けるってね」
「商業科に?」
「うん、言われたわ」
 このことをだ。愛実に話したのである。
「このままいけばね」
「じゃあ推薦で受けるの?」
「わからない。けれどね」
 それでもだというのだ。
「先生に言われたの。何でもっとレベルの上の高校にしないのかって」
「そう言われたのね」
「私だったら男子校だけれど灘も入られるレベルだって」
「灘、ね」
「うん、そう言われたの」
「じゃあ何でもっとレベルが上の高校にしないの?」
 聖花の方から顔を背けて俯いたままでだ。愛実は彼女に問うた。
「そうしたらいいのに」
「だから。高校はね」
「お家のパン屋さんのことを考えてよね」
「ええ、そうするの」
 こう答えたのである。
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