第八話 屋上の騒ぎその八
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「あの酒呑童子の配下だった」
「そうだ。あいつだ」
「あの鬼は四本指だったのね」
「日下部さんが先程言ったな」
青鬼は日下部の顔を見てさらに話す。
「悪い妖怪、鬼は三本指だがな」
「三つの悪ね」
「しかし茨城童子は一つの徳があった」
それが何かというと。
「それは知恵だ」
「つまり考えることなの」
「その通りだ。それが出来るからだ」
知恵という徳がある為茨城童子の指は四本だというのだ。そういうことだった。
「しかし徳は一つだ」
「それで四本指なの」
「そうだったのね」
ここで愛実もわかった。茨城童子の指、そして徳のことも。
「ううん、けれどそれって」
「人間もよね」
「人間も悪い人いるわよね」
「そうよね」
今度は二人で話す。そしてだった。
「人間の場合は指でわからないから」
「厄介よね」
「人間の指はそういうことで増えたり減ったりしないから」
「どうしてもね」
二人で話す。そして首を捻ったのだった。
「そう思うと人間を見るのって難しいわよね」
「そうしたことがわからないから」
「どうしてもそれは」
「難しいけれど」
「その通りだ。人間を見ることは難しい」
日下部は真面目な顔で二人に述べた。
「そうしたことではわからないからな」
「ですよね。そういうことでわからないから」
「どうしても」
「その通りだ。人間を見ることは非常に難しい」
日下部の顔は真面目なままだ。そしてその話を聞く二人もだった。
真面目な顔になっていた。そのうえで愛実は聖花に対してこう言ったのである。
「若し私が妖怪だったらね」
「妖怪だったら?」
「指、なくなってたと思う」
入学してから自分の中に渦巻き暗鬱なものにさせていた嫉妬や劣等感、そうした感情のことを思い出しての言葉だった。
「三本になってたと思う?」
「愛実ちゃんが?」
「うん、聖花ちゃん奇麗で頭もいいし」
「そんな、私は」
「部活でも先輩達の間で凄く評判いいし男の子達の間からも」
人気がある。それでだったというのだ。
「だからね。私愛実ちゃん妬ましいって思ってたから」
「だからなの」
「私、指三本になっていたわ」
「そんな、愛実ちゃんいつも私を助けてくれるじゃない」
聖花にとって愛実は心からの親友だ。忘れ物の多い彼女をいつも助けてくれる頼りになる幼馴染みだ。だからこう言うのだった。
「悪い娘じゃないよ」
「違うの。私は本当に」
「そんなこと言ったわ私もよ」
「えっ、聖花ちゃんも!?」
「だって。愛実ちゃんしっかりしてるし」
聖花が愛実に対してまず言うのはこのことだった。
「それにお料理だって私よりずっとできるし」
「それ言ったら聖花ちゃんもじゃない」
「私なんかよりずっと色々な
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