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八条学園怪異譚
プレリュードその一
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                      八条学園怪異譚
                    プレリュード  結ばれた絆
 二人でそれぞれ見合ってだ。幼い女の子達は緑の、クローバーの絨毯の中で話をしていた。
 一方の娘がだ。にこりとしてもう一方の娘に話す。
「私愛実ちゃん大好きだよ」
「私のことそんなに好きなの?」
「だってお友達だから」
 だからだとだ。その少女はもう一方の少女に話すのだった。
「大好きだよ」
「そうなの。私もね」
 もう一方の少女も言う。にこりとして。
「聖花ちゃん大好きだよ」
「本当に?」
「だって聖花ちゃん私のお友達だから」
 だからだとだ。この少女森本愛実は林田聖花に言うのだった。
「大好きだからね」
「じゃあ私達お互いに大好きなんだね」
「そうなんだね」
 このことも確かめ合うのだった。お互いに。
 そしてだった。愛実の方からこう聖花に言ってきた。その言うこととは。
「今度私のお家に来て」
「愛実ちゃんのお家に?」
「私のお家ね。商店街で食堂やってるの」
 このことをだ。愛実は聖花に話すのだった。その幼く屈託のない声で。
「皆お家のお料理凄く美味しいって言ってくれるの」
「そんなに?」
「うん。おうどんも焼きそばもね」
 まずは麺類からだった。
「丼も定食もね。特にね」
「特に?」
「トンカツ。トンカツ凄く美味しいって言ってくれるの」
 このことをだ。愛実は聖花に満面の笑みで話した。
「こんな美味しいトンカツないって」
「そんなに美味しいの」
「だから今度食べに来て」
 こう聖花に言って誘う。
「そうしてね。待ってるよ」
「本当に行っていいの?」
「いいよ。絶対に来て」 
 愛実は屈託のない笑みのまま話す。
「そうしてね」
「じゃあ今度皆で行くね」
「皆って?」
「家族の皆」
 聖花だけでなくだ。彼女の家族皆でだというのだ。
「皆と一緒に行くから。その時にトンカツね」
「食べてね。一杯ね」
「愛実ちゃんいつもそのトンカツ食べてるの?」
「そうだよ。他のお料理もね」
 食べているというのだ。
「食べてるよ」
「それって羨ましいわ」
「羨ましいの?」
「だって。いつも美味しいもの食べてるのよね」
「そうだよ」
 このことは素直にだ。愛実は満面の笑みで答えた。
「いつも食べてるの、私ね」
「だったらやっぱりね」
「羨ましいのね」
「凄くね。いいなあ」
「言われてみればそうね」
 その通りだとだ。愛実もだった。
 自分でそう思えて幸せな気分になれた。自慢にさえ思えた。
 だがそれでもだった。愛実はそう思うのと共にだった。
 聖花のその顔を見て自然とこう言うのだった。
「けれどね」
「けれどって?」

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