五話 会談と居候
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悠二のその発言に驚いた人が約一名。
その一名、芳乃さくらはその言葉を受けて信じられないという表情を浮かべると言った。
「出てくって……」
「――その方がいいだろ?そっちの爺さんはどうだ?」
さっきから黙って一言もしゃべっていない純一へと声をかける。悠二としては自身の危険性を強め、一晩で出ていける空気を作るためだったのだが
「――もし、ここを出て言って、お前さんはどうするんじゃ?」
相手が悪かった、その一言に尽きた。悠二の知らないことだが、彼……朝倉純一もさくらと同等か、それ以上のお人よしなのだ。
そして、思わぬところからの反撃に悠二は少したじろぐ。
「――どうなの?悠くん」
ジッと悠二を見るさくらの視線から逃れるようにそっと顔を背ける。
「その年じゃ、たとえお金があったとしてもアパートどころか、ホテルすら借りられないわよね?」
さらに由姫からの追撃が入る。
四面楚歌。そんな言葉が不意に浮かび、これがその状況下かと嘆息する。
(――退路なし…か)
逃げ道を塞がれ、頼りの魔眼による催眠でさえ、すでにさくらにバレている。
逃げ道は塞がれ、悠二に出来ることはたった一つのみ。
「――ああ、仰る通りなんも手段なんかない。とりあえずフェリーに密航して本島に渡るくらいしかな!!」
白旗を上げることだった。そのことに口惜しさを覚え半ばやけっぱちになりながら、悠二は白状した。
「じゃあ、今晩だけと言わずにうちにおいでよ、悠くん」
してやったりという顔でさくらは言う。
「――正気か?」
「酷いよ!!」
帰ってきた辛辣な言葉に思わず子供っぽい地の反応をしてしまう。
だが言った方の悠二も考えることがあった。
『解決策……』
そう呟いたときのさくらの表情。あれが引っかかっていた。
(ああいう顔をする人間は決まって……)
限界まで張りつめた弓のような印象を抱くその表情は悠二にとっては既知のものだった。そして、当然、その結末も。
(――)
当然、悠二の創造しているとおりにはならないかもしれない。だが、経験則からいってそれは高確率だろう。見捨てるのは容易い。
だが
(やれやれ)
すでに悠二に見捨てるという選択肢は摩耗しつくされて消えている。
「悠くん……?」
「悪い悪い。そうだな、たまにはいいかもな」
人に甘えてみるのも、恥ずかしさから言葉には出さずに、そして代わりに笑みを深める。
「それに、どうも危なっかしくて見てられん。そうでしょ?爺さん」
どこか、さっきから何かを考え込んでいるような表情を浮かべている純一へと問いかける。
「悠二くん…。君は……」
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