空白期(無印〜A's)
第二十六話 承
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差す。クロノさんは、ちらっ、と視線を少しだけ受付の方に移すと肩をすくめて、やれやれといった様子だった。
「別に隠すつもりはなかったんだ。ただ、言う機会もなくてね」
「いえ、別に責めているわけではないんです。ただ、教本が日本語で、驚いただけですから」
そこで、初めてクロノさんが、合点がいった、というような表情をした。
「そういえば、そうだね。君達がミッドチルダ語を読めるわけないな。ただ、君達の言語があるのは、僕の師匠のおかげじゃないよ。そもそも、君達の世界―――第九十七管理外世界っていうのは、僕たちの世界に来る人も多くてね。子孫の人も結構いるんだ」
クロノさんの口から語られた事実は意外なことだった。どうやら、僕たちが最初というのは自惚れだったらしい。意外にもたくさんの人がこの世界に来ている事がわかった。しかも、話をよく聞くとクロノさんのお師匠さんは、イギリス人らしい。確かに、クロノさんのお師匠さんだけでは、日本語の教本は作れないだろう。
さて、そんなことを話していると時間はあっという間に過ぎて、残り十五分というところになった。そこで、僕たちは、教室の前まで移動する。少し早いような気もしたが、遅れるよりもましだからだ。
「それじゃ、僕たちは、大学のカフェテリアで待っているから、終わったら来るといい」
一日の構成は、二部構成だ。午前中は、教本を使った授業で、後半は、魔法の実技らしい。その間には、お昼ご飯の時間もある。クロノさんは、カフェテリアといったが、どちらかというと、大学の学食だろう、と僕は思っている。
「はい、分かりました」
この場所は初めてだが、幸いにして教本が入っていた手提げ袋の中には、大学構内の地図も同封されており、それを見れば、クロノさんが言っているカフェテリアも分かる。
それじゃ、と後で会う約束を交わした後、恭也さんになのはちゃんのことも任されて、カフェテリアへ向かったクロノさんと恭也さんを見送って、僕たちは教室へ入っていった。
ガラガラと魔法世界という割には、僕たちの世界とあまり変わらないドアを開けて教室に入った瞬間、僕が思ったことは、懐かしいという感覚だった。懐かしく思ったのは、僕が通っていた大学のような教室のつくりをしていたからだ。一番人数が入る教室は、少しだけ斜めになっており、後ろの席の人も黒板が見えるようになっている。もっとも、この教室はホワイトボードのようなものだったが。
「えっと、どこに座ろうか?」
「ショウくんが好きなところでいいよ」
教室を見渡してみると、満員というほど人がいるわけではない。それに連れは、僕となのはちゃんの二人だ。これが、ある一定のグループだとすると席を取るのは非常に苦労するものだが、今日はそういう心配はなさそ
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