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リリカルってなんですか?
空白期(無印〜A's)
第二十五話 裏 (アリサ、すずか、なのは)
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間を経験してしまったがためなのかもしれない。

 なのはは、片手に握っていたレイジングハートをいつもの定位置である桃色のハンカチの上に戻し、自然と自分の筆箱から一つの半分ほど使われた使いかけの消しゴムを取り出す。

「ショウくん……」

 その消しゴムを胸に抱く。この消しゴムは、翔太がなのはに勉強を教えるために来たときに、忘れていったものだ。それをなのはが、自分のものにして、自分の筆箱のなかに入れているのだ。もちろん、次の日に忘れていなかったか、と尋ねてきた翔太には、新品のものを渡している。最初は、渋っていたが、いいから、と無理矢理渡したのだ。それを翔太が使っていることをなのはは、ウォッチャーで確認済みである。自分がプレゼントしたものを大切に使ってくれているようで、それだけでなのはは嬉しくなる。

 なのはは、消しゴムを胸に抱いて、翔太があの指を這わせて使ったであろうことを想像して、少しでも、あの翔太の隣にいるときの空気を得ようとする。翔太が使っていたものが、今は自分の中にある。それだけで、少しでもあの空気を感じたいのだ。もちろん、本物に比べれば、微々たるものだが、今の光景を見せられたなのはの心のささくれた部分を治すには少しでもあの翔太分が必要だった。

 どのくらい、そうしていただろうか、目を瞑っていたなのはは、不意に目を開けて、「よしっ!」と気合を入れなおした。本当なら、いつまでも翔太が使っていた消しゴムを抱いていたかったが、消しゴムを使って翔太を感じれば、感じるほど、消しゴムに残った翔太の香りが減るような気がして、あまり多用はしたくないのだ。

 机の引き出しから、新しいシャープペンシルを取り出したなのはは、いつの間にか血が止まっている左手でシャープペンシルを握りなおし、再び宿題となっている問題集に目を落とす。来年こそ、来年こそは、ショウくんと一緒のクラスになるっ! となのはにとっては、大きな希望を抱きながら。

 その様子を、やはり机の隅にある桃色のハンカチの上からレイジングハートだけが見守っていた。




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