空白期(無印〜A's)
第ニ十五話
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、最近、恭也さんと男女交際を始めたようだ。それは素直に『おめでとうございます』お祝いの言葉を言う事ができるのだが、妹にまで入れ知恵をしないで欲しいと思った。
もっとも、忍さんの性格から考えると、妹を本気で案じているのか、遊んでいるのか分からないところがあるが。忍さんだって分かっているはずだ。いくら、同年代よりも大人びた態度を取る事ができる僕でも、普通に考えれば、男の子である僕が―――通常、精神年齢や心の早熟というのは、女の子のほうが早い―――『恋』などできるはずがない、と。いくらすずかちゃんが頑張ってもハムスターの車輪のようにからからと空回りするだけ、だということに。
それでも、諦めないのは、いつもの態度から僕が『恋』できると感じているか、あるいは、ありえない話であるが、僕が二十歳の精神年齢をしていることに気づいているか、ということである。前者は少しだけ可能性があるかもしれないが、いくらなんでも後者はありえないだろう。
どちらにしても、現状は、すずかちゃんの好意には気づかないことにする、という方針は変わらない。確かに、すずかちゃんからの好意は嬉しいが、それは、例えば、アリシアちゃんに『お兄ちゃん、好きっ!』といわれるのと大して代わりはない。そもそも、二十歳の精神年齢を持っている僕がすずかちゃんに本気で恋などできるはずがない。だから、現状維持なのだ。
「って、あれ? ショウ、何持ってるのよ?」
すずかちゃんに、そうだね、一緒に帰ろうか、と話したところで、不意にアリサちゃんが僕の脇に抱えている小冊子たちに気づいたようだった。
「ああ、これ? 編入の手続きのための書類だよ」
別に隠すようなものではなかったため、あっさりと答えたのだが、僕が正直に答えた瞬間、アリサちゃんとすずかちゃんの顔色がさっ、と変わった。何か変な事を言っただろうか? と自分の発言を鑑みるが、別に変な事を言ったつもりはない。分からない僕は、どうしたの? と尋ねる前にアリサちゃんとすずかちゃんが詰め寄ってきた。アリサちゃんにいたっては、僕の肩を掴むほどだ。驚く僕を余所に、アリサちゃんたちは慌てた様子で口を開いていた。
「ちょっと! ショウ、どっかに転校するのっ!?」
「ショウくん、転校するのっ!?」
ああ、なるほど。
僕は、アリサちゃんたちの疑問を聞いて、ようやく彼女達が何を言いたいかを把握した。つまり、アリシアちゃん用の編入手続きを僕のと勘違いして、僕が聖祥大付属小から転校すると勘違いしたわけだ。ああ、そういえば、確かにアリサちゃんたちはアリシアちゃんのことを知らないのだから、編入といわれたら、僕のものと勘違いするのも無理もない話だ。
しかし、勘違いと分かっている僕は、失礼な話だが、アリサちゃんたちの本気で焦っ
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