空白期(無印〜A's)
第二十四話 裏 (エイミィ、ユーノ、アリサ、すずか、なのは)
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込む梓。せめての抵抗は、とっさに手を被せる事ができることだっただろう。
「もうっ! ママ、何やってるのよ」
あんたが、何言ってるんだ!? と娘に向かって言いそうになるのに必死に堪えて、ナプキンで口元を拭くと、つい先ほどまでの母親の痴態を気にしないように夕飯の続きを口にしていたアリサに核心を問う。
「それで……チュウはできたの?」
「ううん、ショウが、ファーストキスは大切なものだから、本当に好きになった男の子としなさいって」
アリサの中であの時のことは、キスを断わられたという風には思っていない。なにせ、もともとアリサは『好き』という感情を理解するという目的だったものであり、キスという行為の元来の目的を果たすようなものではなかったからだ。そもそも、アリサがその意味を理解していたかどうかも怪しい。だから、翔太が断わったことはアリサに何の傷も残していなかった。
一方、母親である梓は、あっけらかんと答える娘に安心したような、不安を抱いたような複雑な気分だった。翔太に釘を刺されたようだったが、さらに刺しておく必要があるかもと母親としての責務を果たすために口を開いた。
「あのね、アリサ。翔太くんが言ったことは正しいわよ。いい女が簡単にキスとか許しちゃダメよ。簡単にそんなことばっかりしていたら安い女に見られちゃうからね。分かった?」
「うん」
アリサが真面目に頷いたのを見てほっ、と安心する梓。娘が誰を好きになるか分からないが、不幸にはなってほしくないのだから。そう簡単に体の一部とはいえ、安い女にはなってほしくなった。もっとも、勿体つけて、けちな女にもなってほしくないのだが、そんな恋の駆け引きは、ある一定の年齢がくれば、誰でも体験することだ。娘も後、四、五年もすれば、体験するだろう。女は恋の数だけ綺麗になるというし、不幸にならない恋愛をして欲しいものだ、と親心ながら思うのだった。
◇ ◇ ◇
月村すずかは、食後に入れてくれた紅茶を飲みながら、ふぅ、と小さくため息を吐いていた。その表情は浮かない。何か楽しい事があっても、すぐに沈んでしまう。それはあの旅行から帰ってきてからだ。原因は分かっている。あの夜の散歩を盗み見てしまったからだ。
あの旅行から帰ってきてからすずかは、気分が浮かない日常を過ごしていた。
楽しかったはずの翔太の昼食も、翔太の隣に座って、翔太の顔を見るとあの夜のことを思い出してしまう。どうしても、アリサと翔太のキスシーンが浮かんできてしまい、前のように仲良くなろうと積極的に翔太に話しかけることもできない。
すずかの中で燻っているのは、アリサと翔太の関係だ。二人は恋人同士なのか。いや、そうでなければ、あの夜のことは理解できないのだが。しかし、す
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