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リリカルってなんですか?
空白期(無印〜A's)
第二十四話 (蔵元家、幼馴染、男友人、担任)
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。言葉にすれば簡単なのにやるのは非常に忙しい。起きる時間が大体固まっているとはいえ、若干のずれがある。そのずれの間に一度に二枚までしか焼けないトースターと焼き加減を考えながらトーストを焼くのだから、朝は翔子にとっても大変なのだ。

 しかも、話によると小学生の子どもを持つ一般的な家庭では、これに加えて子どもの準備も加わり、体が二つあっても足りないというほどに多忙になるのだから翔子からしてみれば、信じられないことこの上ない。もっとも、蔵元家の長男である翔太は、まったくと言っていいほどに翔子の手を煩わせることはなかったが。

 この話をすると翔子は近所の同じ年頃の子どもを持つ奥様方からは羨ましがられるものだが、翔子としては、もう少し手がかかるほうがよかったかもしれないと思う。

 傍から見れば、翔子の息子である翔太は、できすぎだ。

 近所では有名な私立の小学校である聖祥大付属小学校に通いながら、成績は一位を維持し、さらには人をまとめる能力さえあり、我侭を言って自分達を困らせることもない、手伝いも率先してやってくれる。まさしく完璧に近いいい子だといっても過言ではないだろう。

 しかしながら、翔子からしてみれば、翔太は、もちろんいい子に育ってくれたのは嬉しいが、少し手がかからなすぎて物足りないというのが本音だった。近所の井戸端会議でも、自分の息子や娘に対して、不平や不満を言う人がいるが、それが少しだけ翔子には羨ましかった。もっとも、それは隣の芝生は青いというヤツかもしれないが。

「母さ〜ん」

 庭で少し考え事をしていた翔子は、新しくできた娘が自分を呼ぶ声で正気に戻った。声の方向を見てみると、アリシアの身長の半分ほどはあるほぼ一杯になった洗濯籠を抱えたアリシアがこちらに向かって歩いてきていた。その足取りは、洗濯籠が重いのか少しふらついており、アリシアの背後を心配そうにアルフが見守っている。

 本当にアルフの耳と尻尾がなければ、年の離れた姉妹と言ってもいいぐらいの構図だった。

 正確には、魔法使いと使い魔だっただろうか。彼女達はそんな関係だ。もっとも、やはりココに来てからの様子を鑑みるにやはり主従というよりも姉妹と言ったほうが適切なような気がする、と翔子は考えていた。

 殆ど我侭という我侭を聞いたことがない翔太からの初めての我侭は彼女達を蔵元家で引き取ることだった。アリシアとは最初に出会ったときからなぜか母親と勘違いされ、その関係から保護はしていたが、まさか引き取るとは思っていなかった。

 もちろん、アリシアから本当の娘のように母さん、母さんと呼ばれるのは嬉しかった―――息子が二人もいると娘も欲しくなる―――し、彼女の境遇を考えれば、同情する余地がないわけではない。しかしながら、それでも、と躊躇しなかったか? 
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