第十話
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翌日。1時限目の授業の後にエルシャンは即座に昨日の女性を探しに教室を出る。
色々問題発言を繰り返したポアーチではあったが、女性へのアプローチに関しては当たり前の事を言っているとエルシャンは思った。
この世に思っているだけで通じるような愛は存在しない。そんなものはそれこそフィクションの中にしかない。
「言葉にして伝えなければ何も始まらない……」
遅れてやってきた麻疹の様な恋。だからこそ、その想いは強く一度自覚した以上は忘れてしまえるものではない。恋の草食獣は覚悟を決めて恋愛雑食獣程度には進化したのだった。
そんな思いはさておき、エルシャンには昨日の女性を探す手がかりが無かった。
結局最初の休み時間の10分間は、校舎内の廊下を歩き回るだけに費やされ無駄足に終わった。
教師である可能性が高いのだから職員室や準備室を当たってみれば良かったのだが、恋愛が彼の視野を狭く愚かにしていたため、2時限目の授業以降の休み時間も闇雲に学校中を探し回るだけで無駄にする事となった。
「あぅっ、しまった」
午前の授業が終わり、急いで昼食を終えて再び探しに行こうと思っていたエルシャンだが、弁当箱が入ったバッグの中にウークの分の弁当箱まで入っている事に気付いた。
彼女の事で気もそぞろだったために、ウークを一年生の教室まで送って行った時に彼の分を渡すを忘れて持ってきてしまっていたのだった。
「ウーク!」
急いで弟の教室にたどり着いたエルシャンは、教室の入り口にから呼びかけた。
「兄ちゃん!」
他のクラスメイトの姿が無く──基本的に生徒は学食で食事をとり、エルシャン兄弟のように弁当を学校に持ち込む方が少数派。だが飯マズのフルント星においてトリマ家の食事のレベルは群を抜いて高く、その食事に慣れてしまったウークにとって学食のメニューは満足できるものではなく母親に作ってもらった弁当を持ち込んでいる──1人教室に残っていたウークは兄の姿を見つけて走りよってくる。
「ごめんなウーク。お弁当を渡すのを忘れて」
心細かったのだろう。安心して嬉しそうに駆け寄ってくるウークにエルシャンは心から頭を下げる。
恋に夢中になって弟を蔑ろにしてしまった様な気がして心が痛んだ。
「いいよ、だから一生に食べようよ」
いつもは弁当を学食に持ち込んでクラスの友達──ウークにはちゃんと友達が居た──と一緒に食べていたのだが、今日は弁当箱が無かった。そのことに気付いたのはHRの後に授業の準備をしていて気付いたのだが、まだ学校に慣れていないウークにとって休み時間に上級生のいる上のフロアに行き、兄から受け取るというミッションは恐ろしくて無理だった。
だから彼は兄が気付いて持って来てくれる事を信じて教室で一人待っていた。だからちゃんと弁当箱を持ってきてくれたこ
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