第十話
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別の残るフルント人社会において、彼女が遺伝子レベルでシルバ族と確認されなければ教師にはなれなかったはずなので、根拠の無い誹謗などポアーチやユーシンは気にもしないだろう。
可能性としてあるのは親戚の分家筋が文句をつけて来る事だが、本家の地位を譲ってやると脅せば尻尾を巻いて逃げ出すだろう。
最悪、可哀想だがウークに全てを押し付ける事さえも考えていた。
「駄目だ。駄目なんだ。私は、私はとうに女を捨てたんだ──」
声を荒げて否定するネヴィラの目元に浮かんだ涙の粒を見た瞬間エルシャンの理性が吹っ飛んだ。
同時に彼の中で眠っていた本能。深い深い、冬眠よりも深い眠りでもう一生目覚めないと思われていた彼の中の恋愛肉食獣がついに目覚めた。
椅子を蹴って立ち上がると、目線の高さが合った──2人の身長には50cm近くの差がある──右手でネヴィラの肩を掴んで引き寄せ、そのまま左腕を彼女の首の裏に回して抱き寄せると、リップクリームを塗っただけの形の良いその唇を強引に奪った。
その間僅か1秒。唇を奪われたネヴィラも、それを見ていたウークも呆然と目を見開いて固まっている。
そしてゆっくりと唇を離す。
「貴方が捨てた女を僕にください。一生大事にします」
真顔でそんな臭い台詞を口にしたエルシャンだが、既に自分でも何を言ってるのか良く分かっていなかった。
そして、言われたネヴィラも何を言われているのかショックの余り良く分かっていなかった。
はっきりしているのは、目覚めたばかりの乙女心が目覚めたばかりの恋愛肉食獣に美味しく頂かれてしまったということだけだった。
「……はい」
訳の分からないまま、そう答えてしまったネヴィラの唇をエルシャンの唇が再び塞ぐ。
そして一番訳の分かっていないウークは、大好きな先生と大好きな兄の超展開に「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…………」と小さく声を上げ続けるしか出来なかった。
ちなみにその30秒後、正気を取り戻したネヴィラにエルシャンは全力の平手打ちを貰って文字通りぶっ飛ばされた。
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