第十話
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したとしても、祖父や曽祖父が普通に現役というのは当たり前なのだが、トリマ家のような名門氏族の本家跡取りともなると軒並み晩婚であり、ポアーチの父親の結婚は50過ぎであり、祖父は40過ぎであった。
しかしポアーチは跡取りではなく気軽な立場の次男坊である。逆に名門であることが有利に働く立場であり、自身は一流パイロット。見た目も貴公子然とした美男であり、もてない筈が無いのだが、ネヴィラとは違い明確な理由も無く彼は本当にもてなかった。
もし彼に恋愛面での武勲があるとするならば、兄の死後にトリマ本家の当主に祭り上げられた一年後に、10歳年下で当時は誰もが羨む美少女だったユーシンを射止めたことだけだ。しかし、それもユーシンが何を血迷ったのかポアーチに一方的に惚れるという珍事の結果であり、とても胸張って息子に恋愛を語る資格などは無かったのであった。
そんな事とは露知らず、エルシャンは父の言葉を信じて全面攻勢を崩さない。
「一目見て心を奪われました」
これはネヴィラにとって心底嬉しい言葉である。戸惑いと混乱の中でも心の真ん中を打ち抜くような言葉だった。
一目見て、つまり一番目立つ自分の身長の高さを含めてと言うことであり、「デカ女」の一言で女としての自分を否定され続けてきた彼女には涙が出るほど嬉しい言葉だ。だがどんなに嬉しくても頷けるわけが無い。
相手は自分の半分も生きていない、まだ9歳の少年。しかも出会って間もない相手であり、恋愛の対象として見るには余りにも相手の事を知らなかった。
「幾つ年が離れていると思うんだ!」
エルシャンの手を振り解いて大きな声を上げる。
「年の差ですか。それならもし僕が貴方と同じ歳だったとしたら付き合っても良いと思っていてくれるんですか?」
一方エルシャンは、まるで言質をとったかのように目を逸らさずに冷静に確認する。
内心はかなり限界ギリギリなのだが『目を逸らしたら負けかな』という思いでネヴィラの目をじっと見つめながら話す。
「い、いや、そんな事は言ってない。大体私と君は教師と生徒じゃないか」
誤解とはいえ、年下の少年の男らしい態度にネヴィラは目覚めたばかりの初心な乙女心を揺さぶられる。
理屈ではなく彼女の中の女の部分が、良く知りもしない目の前の少年に惹きつけられていく。
「僕は何時までも生徒じゃありません。初等教育過程を終えればこの学校の生徒じゃなくなります」
「違う。違う。君は何も分かっていない。こんなアルキタ族との混じり者呼ばわりされる私とトリマの跡取りの君が、つり合う筈が無いだろう!」
ネヴィラはエルシャンに惹きつけられる自分の気持ちを振り払うために、あえて自分に向けられる誹謗の中で最も嫌な言葉である『混じり者』を口にした。
血が混じり合う事を禁忌とする純血主義の行き過ぎた面
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