第十話
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半ば成人女子は160cm程度のシルバ族の中では規格外に大きい。そしてその『規格』というのがシルバ族のみならずフルント人の純血主義にとって重要な意味を持っていた。
シルバ族は6大種族の中では最も小柄な種族であり、小柄であるという事が種族的特長であり身長はあまり極端ではない限り低い方がステータスである。特に女性においては身体が大きいというだけで、女性的な魅力という意味で大きく評価を下げる要因となった。
そんなシルバ族社会では、女の子が男の子より大きいと言う事は、子供達の間で十分差別の対象となり、その体格の良さから直接的なイジメ対象になることは無かったものの、男の子達は近寄ろうともしなかった。
一方で女の子達には凄い人気があったのが、彼女にとって救いだった。
それは思春期になっても変わることは無く、シルバ族の少年達は美しく成長したネヴィラを気にはしつつも結婚の対象としてみる事は決してなかった。その頃になると彼女も自分が女と見られることは無いと自分の人生に見切りをつけるようになっていた。
それから10年近くの時が過ぎて、人生初めての異性からの告白──実は特殊な趣味を持つ女性からの告白は、悲しい事にかなりあった──に戸惑う。彼女の現在の男性的な性格は、女である事を諦めた後に努力して獲得した性格であり、元々の彼女はむしろとても女性的な性格であり、真っ直ぐ見つめてくるエルシャンの瞳に封じられていた乙女心が蘇ろうとしていた。
「じょ、冗談はもう良いから……」
「冗談なんかじゃない。本気です。僕は貴方が好きだ」
エルシャンはそう言って身を乗り出すと、ネヴィラの手を取り両手で強く握る。握られた彼女は思わず手を引っ込めようとするが、エルシャンの手は離そうとはしない。
彼の頭の中で『良いか、告白のタイミングを計るのも重要だが、もっと重要なのは告白した後は、とことん前に出るということだ。そこで退いたら終わりだ。相手が受け入れてくれるか、明確なNOをだすまでは決して退くな』というポアーチの言葉が蘇る。実際正しい事を言って無くもない。エルシャンもそれが正しいと信じていた。。
ちなみにポアーチが結婚したのは25歳の時。フルント人の常識に照らし合わせれば男性としても完全に婚期を逃した負け犬である。
これが名門トリマの本家の跡取りという立場だったなら仕方ない部分もある。名声がある一方で、自分の稼ぎまで艦隊運営に注ぎ込む事を求められる名門氏族の跡取りと結婚したいという奇特な女性は少ない。実際、死んだポアーチの兄も30歳を間近にして独身だった。
更に言えば、フルント人の平均寿命は120歳を超え、150歳を超える長寿を誇る老人も少なくなく、早婚の風習と相まって自分の8代・9代先の子孫が居るという老人はそれほど珍しくは無い。普通なら25歳の時に父親を亡く
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