第十話
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りに際しては左側に振ると言われている──に振れてしまう。
「お兄さんの噂は聞いているよ。とても弟思いの良いお兄さんだそうだね」
「最近は、ウークもあまり構うと嫌がるようになってきたので、学校でこうして一緒に昼を食べるなんて事はこれが最後かもしれません」
「ウーク君は、兄離れですか?」
「う〜ん、わかんない」
今は兄に甘える弟であるよりも妹達に頼られる兄になりたい。そんな気持ちがウークの中にある。だが兄が嫌いになった訳ではないので返答に困る。
「僕の方がいつまでも弟離れ出来てないんです」
困った様子の弟の頭に手をのせ優しく撫でながらエルシャンはそう答えた。
「本当に仲の良いのね」
ごく自然に弟を庇うようなエルシャンの言葉に、ネヴィラは微笑ましそうに和らいだ表情を浮かべる。
そんな彼女の表情はまるで少女の様に可愛らしかった。今までのさばさばとしてクールな印象との違いにエルシャンの心拍数は更に跳ね上がる。
一瞬の間に『ここで勝負を掛けるのか?』このフレーズが何度も頭の中をぐるぐると回り続け、次の一瞬には回転の渦の中に『ウークの前でウークの担任に告白は拙くない?』というフレーズが飛び込むと一緒になって回り始めて、更なる思考の迷宮の奥へと陥ろうとしたエルシャンをウークの声が救う。
「兄ちゃん」
また昨日のように様子がおかしくなった兄に不安を抱いたウークがエルシャンの袖を引きながら呼びかける。
「ん……ああ。何でもないよウーク」
心配そうな顔をしているウークに笑いかけながらエルシャンはほっとする。
「しかし凄いお弁当だね。可愛いし美味しそうだよ」
まだ手付かずのエルシャンの弁当を身を乗り出して覗き込みながら感想を述べる。
「この黒いのは何なんだい?」
オムライスの上に張り付いて猫の顔の目鼻やヒゲを作っている黒いシート状のものを指差して尋ねる。
「これは薄い葉を持つ海草の一種を細かく刻んでから、板の上に均等に隙間無く並べて乾燥させたもので、シルフド星系のラーヴェという伝統食をフルントの海で取れた海草で再現したものです。海の匂いと、一度火にアブってあるので香ばしさが特徴です。まだ試作段階のなのですが、今年中には商品化する予定です」
「さすがはラッシー食品のオーナーの息子だね。偉い偉い」
淀みなく説明を始めたエルシャンに呆然としたネヴィラだったが、次の瞬間には笑いながらエルシャンの頭を撫でていた。
ちなみにラッシー食品はエルシャンが考えたアイデア──と言うことになっている。地球の食文化のパクリ──を元に、ユーシンがアレンジした料理や調味料などを販売する会社で、創作料理レストランチェーン『クドリャフカ』も出店も行っている。有限会社として立ち上げたが現在は株式会社になり、株式の80%をポアーチ・ユーシン・
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