第15話 冥犬パスカル(2)
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もはや目的も忘れた力への渇望に身を焦がしながら林の中で犬歯をむき出しにし、ソイツは獰猛な笑みを浮かべた。
「オーカス!」
女性のもとへ移動し、安否を確認していたら突然後ろで、車が激突したかのような音が響いた。
その音に驚き振り返ると、先程のモンスターが前足を振り上げ立ち上がり、オーカスに圧し掛かろうとしていたのだ。
オーカスはモンスターの不意打ちに前足を掴んでしのぐが、モンスターはグワッと喉の奥が見えんばかりに口を開け、オーカスの体を喰い破らんと噛みつこうとする。
「見え透いた罠に掛かるという事がかくも不快だとはな……、サマナー!」
両腕で何とかモンスターと距離を開けつつ、豚顔一杯にしかめっ面をして、オーカスは純吾の方を見た。
「そ奴をこの場から遠ざけよ! 戦いの邪魔にしかならん!」
「……分かった、それまで耐えて!」
純吾はコクンと頷くと、女性を抱えて入口の方へ走る。
「物分かりがよくてよろしい。……ブウゥ、ヴォーノ!!」
そう満足げに言うと、雄たけびと共にモンスターを押し返し、王笏を振る。
しかし先程までと違い、モンスターは横に大きく跳びそれを避ける。そして再び猛々しい雄たけびと共にオーカスに躍りかかっていく。
ある時は攻撃を横っとびに避け、攻撃のこない横に或いは後ろに回り込もうとし、またある時は蛇のように蛇行しながらオーカスの狙いをブレさせるように。
そう、モンスターは一方からだけでなく、前後左右360度から襲いかかってきたのだ。
王笏をいくら素早く振り回しても、相手はそれ以上の素早さで攻撃を避け、攻撃する角度を変えその牙で、爪や尻尾を振り回し飛びかかってくる。
その変幻自在な動きに、やがてオーカスの攻撃も対応しきれなくなり
「ヴぉ、ヴォーーーノ!」
何度目かの攻撃を避けられ、腕が伸びきったところを腕とは反対側からタックルを受け、そのまま押し倒されてしまった。ズズゥゥン! と、勢いのまま組み付されたためあたりを揺るがす轟音を起こし、叩きつけられた石畳に大きなひびを入れる。
「これだから、脳筋の相手は嫌だったのだ!」
腕を押さえこまれ、噛みつきをしかけてくるモンスターを、首を振って顔を逸らす事でなんとかオーカスは避ける。
ガチン、ガチンとオーカスの顔のすぐ傍でモンスターが噛みつく不快な甲高い音が聞こえてきた。
「ッ! オーカス!」
その時、女性を鳥居の後ろにもたれ掛かけさせた純吾が戦いに戻ってきた。
しかし、そのままオーカスの所へ戻る、ということはしない。
純吾はその場で両足を広げ、腰を落とす。右手を左腰のあたりに持っていき、居合のような姿勢を取った。腰にある右手が光り、真っ白で長大な剣のよう
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