第15話 冥犬パスカル(2)
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理解できない攻撃に疑問半分、怒り半分と言ったところだろう。
「ブッハハハハ! 間抜け面を晒しよって、ヴォーノ! ヴォォォーノ!!」
しかしそんな威嚇に逆に自身の有利を確信したか、オーカスは狂ったかのように叫びながら、更に何度も王笏を振るった。
決して届かない攻撃を当てた理由、それはオーカスの属する【邪神】の種族特有スキル【混沌の波動】によるものだ。素早さを犠牲にするなど大きなデメリットがあるが、このように距離的な隔たりに関係なく自身の攻撃を相手に当てる事が出来る。
王笏を振るうたびにドゴンドゴンと鈍い音を立て、モンスターの様々な所に見えない打撃がぶち当たり、その巨体が左右にふらふらと揺さぶられる。
顔を怒りによって更に歪めつつも2、3度はモンスターも衝撃に耐えていたが、とどめとばかりに繰り出された大振りの横薙ぎを見て、自ら横薙ぎに合わせる様にして神社の森の中に飛び込んで行った。
「ブフゥ…、何とも呆気ない奴よなぁ」
「オーカス、逃がしちゃ、ダメ」
純吾は横で退屈そうにため息をつく巨体を非難するかのような視線を送る。
彼の目的は「ジュエルシードの回収」であって、倒す事ではない。それなのにわざわざ逃げられやすい森の中に吹き飛ばしてしまうとあっては、流石に愚痴の一つも言いたくなるというものだ。
「……ふむ、こういう時人間は不便だのぅ。あ奴は逃げんよ、必ずな」
「?」
「まぁ、よい。それよりサマナー、あのカーネよりも、優先すべき事があるのではないか?」
顎をしゃくったオーカスの示す方向は、神社の奥。
そこには、先の悲鳴の原因であろう女性が倒れていた。
小さい人間と、黄色い巨体が女に近づくのを、ソイツは怒り半分、嬉しさ半分で林の陰から見ていた。
怒りとは、勿論先程まで受けていたあの攻撃に対してだ。
こうも一方的に自分が近づく事も出来ずにただ殴られ、そして吹き飛ばされた事は、ソイツにとっては非常に大きな屈辱だったのだ。
力を得たはずの自分が、どうしてこのような屈辱を受けねばならないのか?
そう考えると、血が沸騰しそうになるほどの怒りが湧き上がる。
そして嬉しさと言うのは、相手の有利が崩れたためだ。
先程まで自分が相手に近づくには前進するしかなかった。それは相手が入口にいて、自分が奥の側にいたからである。今までは、近づくにはあの見えない攻撃を真正面から受けるほかなかった。
しかし、相手は今自らその有利な地形を捨てた。
あの女、所詮群れなければ弱い人間かと思っていたが、意外なところで役に立った。
さぁ、これから反撃だ。あいつを倒してその肉を喰らえば、自分はもっと高みへ、もっと強い力を得る事ができる。
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