第15話 冥犬パスカル(2)
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「あのバカ、あのバカ、あのバカ!」
タッタッタ、と軽快に、けれどもどこか焦ったような音を立てて、金髪の少女が神社へと続く石段を駆け下りていた。
「何が『嬉しい』よ、『絶対守る』よ!!」
そうやって、そこにはいない誰かへと悪態をつく彼女の顔は、耳の裏に至るまで真っ赤だ。
確かに階段を急いで駆け降りるというのは小学3年生の少女にとってはいささかきつい運動だろうが、今はそれ以外の原因での顔の紅潮である。
「それに! いきなり名前呼ぶなんて!!」
その言葉と共に、タンッ、と最後の段をジャンプして一気に降りる。トン、という軽い音をたてて着地。
そして後ろを振り返り、今は見えない階段の頂上に向かって大声で言い放った。
「すぐになのはたち呼んでくるから、それまで負けるんじゃないわよ! このバカジュンゴ!!?」
少女――アリサ・バニングスは自身が邪魔にならない所まで来たのを確認すると、急いで携帯を取り出し、仲間の少女へと連絡をするのだった。
「全く、次からは気をつけるのだぞサマナー。どんな相手と戦わねばならぬか、それは生死を左右する要ぞ」
「ん…。分かった、オーカス」
ブフゥ、と豚の鼻から盛大な鼻息を洩らしつつオーカスの言った苦情に、純吾はすまなそうに眼を伏せ、謝罪をした。
今、彼らから2,30メートル――それでも、数歩で踏破される距離だが――には回収するべきジュエルシードを宿した犬型のモンスターがおり、1人と1柱はソイツと対峙していた。
ソイツは純吾とオーカスの隙を突こうと、こうして警戒しつつ話している最中にも視線の先でうろうろと巨体をさまよわせており、時折地獄の底から聞こえてくるのではないか、という低い声で威嚇をしていてきている。
「ヴォーノ! では、目の前の躾のなっていないカーネに、少しお仕置きをするとしようかの!!」
純吾の謝罪に気を良くしたか、そう巨体を揺るがして大笑し、オーカスは王笏を横に薙ぎ払った。
それは、通常なら絶対に当たらない攻撃である。
何故なら先にも言った通り、オーカスとモンスターの間には距離という絶対の防壁がある。魔法か、それとも近づいて王笏の殴打が当たるまで近づかなければならないはずだからだ。
だが次の瞬間、モンスターの頭が何かに殴られたかのように激しくブレた。それにつられたたらを踏んだかのように四肢をよろめかせる。
その巨体が揺さぶられる中、何が起こったのか分からないという顔をモンスターがする。
だがそれも一瞬の事だった。
キッ、とすぐに態勢を立て直しモンスターがこちらを睨み返してきたのだ。
先程までより眉根に、鼻にもしわを寄せ、犬歯をむき出しにして唸ってくる。
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