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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十九話 我ら主導者に非ずとも
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んからな。
そうした件をを利用して貴様を担ごうとする連中も出てくるやもしらん。
それはただまとわりつかれるだけで面倒なものだ」
と荻名もまっとうな忠告を教え子に授ける。
 ――奏上は武官にとっては最大の栄誉だ、俺だって裏側を考えなかったら一度は夢見る。
それが大隊長代行の直衛がやらかした事で駒城内でも喧喧囂囂の騒ぎになった。確かに羨ましくはあるが、現状だと其処に俺が立っていたらどうなったか、考えただけでもぞっとする。
今の所は新城が悪目立ちしているからまだマシだが・・・・・・反新城派の神輿に乗せられる事になったら家の破滅だ。
「当事者になっていたら内地で名誉の戦死という笑えない状況も見えてきそうですがね」
「貴様ならそういうだろうと思っていた。本当に貴様は馬堂だ」

「お褒めいただき光栄です、教官殿」
頭が痛いとでもいうかのように蟀谷を揉む荻名に豊久は満面の笑みを向ける。
「まぁ、貴様は余計な事を云わなければ問題ないだろう。今回の貴様は俺のおまけのようなものだ。手札ではあってもまだ指し手ではない。」
「前線送りですからね。皇都の政務は御祖父様と父上にお任せするしかありません」
――今回は聞き、見て、言わざる、と行きますか。



同日 午後第五刻 皇都内 星湾茶寮内
〈皇国〉陸軍中佐 馬堂豊久


 馬堂豊久は辛うじて貴族将校としての体面を保ちつつもその頬を冷や汗が流れるのを止める事はできなかった。
 ――なんの冗談だ、この卓に座っている面子は。
通された部屋に居る先客は三名だった。

「お久しぶりですな、閣下。それと中佐も二年ぶりといったところか」
相変わらず茫洋とした掴み所のない顔つきの西原信置大佐が座っている。
これは当たり前だが。

「ほう、彼があの馬堂の世継ぎか。」
 何故か、〈皇国〉執政利賀元正が居る。五将家のいずれにも属さない政治家で、<皇国>最大の信徒数を誇る帯念宗の実務を司っていたやり手の生臭坊主である。すでに還俗しているが、支持基盤としての帯念宗は宗教の政治力が弱い<皇国>でも無視できない支持基盤であり、将家内だけではなく、衆民院の有力議員にも彼の傘下にある者が何名も存在する。
執政府を内においても主要な閣僚は五将家出身者であり、利賀はむしろその意見を調整するために中立的な立場を買われて執政の座に就いたようなものである。そのため、利賀は政治家としての指導力ではなくもっぱらその政治的位置を重視されるのであるが、それだけで執政の地位を得られるわけもないと豊久は考えている。
 ――そして最後の一人は
「・・・・・・」
じとり、と荻名教官を横目で見るが
「――――――」
 俺は知らんとでも言いたそうに荻名も首をブルンブルンと振っている。
「おや、御二人も来ていました
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