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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十九話 我ら主導者に非ずとも
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領個人の話なのかですね。」

「さてな、一介の陪臣には分からんな」
そういって意地悪く笑う。
 ――もうやだ、この教官。
「だが、貴様も分かっているだろうが、その二つはほぼ同義だ。大殿様は大抵の事は若殿にお任せになっていらっしゃるからな」

「ほぼ同義と同義は全く違うのですが・・・・・・」
身をもって父に教えられた事だ。

「聞く相手が間違っているということだ。まぁ、前の時の様に俺に付いていくとでも思っておけ」
馬車に乗り込みながら苦笑を浮かべた馬車の持ち主が会話に割り込んできた。

「あぁ、また龍州に出向ですしね。今度は聯隊のおまけ付きですが」
厭な事まで似ているな。

「ん?やはり貴様も龍州行きか。」
荻名中佐が反応した。

「そうなるでしょうね。まだ正式には決まってはいませんが、どうも連隊を任せていただける様で」

「名目上は臨時配置でその後に大佐殿、か?
貴様も苦労に見合った信賞を、とは言えないか。若殿に目をつけられたのだからな。」
 にたにたと愛弟子(?)の苦境にかつての鬼教官は声をあげて笑った。
 ――却説、あの悪党中年は一体何を企んでいる?西原は総反攻が潰された後は日和見に徹している。守原は宮野木と結び反駒城勢力を結成、安東を取り込みつつある。
それに対して駒城は北領で武勲を自家の陪臣と育預が立てた事。皇家の有力者である実仁親王殿下と協力して奏上の場で大芝居をうったという公然の秘密。そして守原が北領を失った今、五将家の中では随一の経済力を武器に衆民・叛徒出身の将校や水軍、近衛と協調関係を結ぶことで発言力の拡大を狙っている。
 ――どうせ西州は勝った方にドヤ顔で肩を組んでいるのだろう。あの家は歴史を見るとそうした紳士的な外交に長けているのだ――とまぁ、〈皇国〉は今日も元気に魑魅魍魎が跳梁跋扈しているのであるがその中でも西原家から見ると取り分け厄介な魍魎爺が跳ね回っている。

「背州公――宮野木和麿は相変わらずの様子らしいですね」
 馬堂中佐の独り言風の問いかけに堂賀准将が微笑して頷いた。
「駒城も西原も目の敵だ、安東も先代が長生きしなくて良かった、と思っているかもしれんな。」
 宮野木和麿退役大将は自分を表舞台から追いやった駒城篤胤大将と信置大佐を憎悪している。彼等が勝利し、守原と共に実権を握った後に西原家を歓迎するとは思えない。
「守原閣下も宮野木の御老公の方がお好みらしくてな。都合の良い時には我らの主家も盟友扱いしていただけるのだが近頃はそうではないようだ」
 荻名中佐の惚けた言葉に堂賀准将が声を殺さずに笑い出した。
「かつて己の故郷に住まう親しき隣人に敵わないのは仕方無いでしょう」
馬堂中佐もそういって肩を竦める。
 ――我ながら適当な減らず口だ。
 実際のところ、
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