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ソードアート・オンライン〜黒の剣士と紅き死神〜
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かべた目に浮かんだのは僅かな恐れ。


―――無理もない。恐らくは須郷により病院での件は話されているだろうし、アクセスカードを持っていたということは、笠原にも会ったのだろう。

口の閉まりの悪い奴のことだ。余計なことを口を滑らしたに違いない。


俺は苦笑いを返すと、キリトを早くしろ、と急かした。


――解凍率61%



「――アスナ」

「ママ……ママ!!」


2人が鳥籠の中へ入って行くのを確認すると、俺は反転してその場に仁王立ちする。
100mほど先にある樹のうろから滲み出る狂気に対して一切手加減無しの殺気を放つ。

とはいっても仮想世界に殺気があるのかはSAO時代にも結局、保留事項になったのだが。


――解凍率74%


(……ぎり間に合わねぇな……)


うろに視線を固定したまま、少し、冷や汗が垂れる。

残念、詰みだ。

うろから待ち人の足が出た瞬間、俺は後方に吹き飛ばされ、奥の格子に叩きつけられる。


「「レイ(君)!?」」「にぃ!?」


反射的に起き上がろうとするが、今度は鳥籠がドプン、と粘液のような液体に水没した。

同時に、世界が暗転する。

体を動かそうとしても動かない。粘液が絡み付き、自由に動くことが出来ない。


(……野郎、手口までネットリかよ)


恐らく、前世は蝸牛かナメクジだ。ナマコも可。


アスナの腕の中でユイが悲鳴をあげる。


「きゃあっ!パパ……ママ……気をつけて!何か……よくないモノが……!」

「ちっ……」


――解凍率82%。プログラム、限定起動(セミブート)――制限0.5秒(リミット・フィフス)
解凍スピードは弱冠落ちるが、ユイを退避させるために、空間を構成するコードを一瞬、歪ませる。ユイはその隙間から無事にこの空間を脱した。

2人はユイが急に消えて動揺しているが、説明している暇はない。
重力は更に増し、俺は地面(水面?)に伏せたままかろうじて頭だけを上げられるという状況だ。


「やあ、どうかな、この魔法は?次のアップデートで導入される予定なんだけどね、ちょっと効果が強すぎるかねえ?」


会うのも、声を聞くのも初めてだが、直感で察した。


「……ようやく、会えたな。須郷」

「ん?誰だい、君は……ああ!そうか、君が螢君だね?」


憎悪と嗜虐性を併せ持った顔をこちらに向けて笑う。だが、表情に反して目は怒りの業火に光っていた。
俺はそれにニッコリと応じる。

須郷はヒクッ、と頬を動かしたが、大人しくしている俺より、もがいているキリトを虐めた方が楽しそうと踏んだようですぐさま背を向けた。


――解凍率90% 最終
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