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くらいくらい電子の森に・・・
第六章 (2)
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と、呑気なことを考えた。
「柚木がノーパソを持って僕の部屋に来た。…ほんの2、3日前だ」
「!!」
「一緒に接続していたから、取り違えたのかもしれない」
言葉を切って、再度彼らを見渡す。皆、混乱と憔悴を極めたような顔つきで、僕と柚木を見比べていた。続いて柚木のほうに、ちらっと目を馳せる。柚木はあっけに取られたような顔つきで、僕を見ていた。
「…お前が協力者だというなら、言ってみろ。何を協力していた」
柚木の側に立っている男が、呟くように言った。
「MOGMOGの件。詳しいことは言えない」
「お前が『ビアンキ』のマスター?」
「そうだよ。……あんたたちが『人さらい』?」
正面の人物をにらみつけた。目が慣れてきて、月の光でも彼らの表情が少しわかる。『人さらい』という言葉を出した瞬間、彼らは目に見えて動揺した。
「で、僕らもさらうつもりなのか。柚木も僕も、家族がいる。まして紺野さんは事情を知ってるんだ。すぐ足が着くよ」
「…もう、こうするしかなかったの」
正面の人が、力ない声で呟いた。月明かりに照らし出された肢体は、意外とほっそりしている。この人は女性だ。そうに違いない。……もし強行突破するなら、正面だ。
「私たちは確かに、大変なことをしてしまった。だからもう…八方塞がりなの。…そこの子が紺野さんの『計画』に関わっていると知った時、もう彼女を頼るしかない、と思いつめたわ。最初は街中で声を掛けた。企業のマーケット調査を装って近づき、あたりさわりのない話をして、こちらの話に乗ってきそうな子だったら、謝礼を渡して協力を仰ごうと思ったの…」
ちら、と柚木を見た。柚木はサングラスを突き通すような目つきで彼女を睨みつける。
「あのしつこいキャッチみたいなのも、あんたたちだったの!」
「…彼女とは、話すら出来なかったわ。それで…こんなことに」
「ばかみたい!」
「そうね……」
彼女は顔を伏せた。浅くかけたサングラスの隙間から、長いまつ毛と黒目がちな瞳がのぞいた。…僕と同じくらいか、年下かもしれない。月の光しか頼れないながらも、相当な美人だってことは薄々分かる。
「こんなことを頼めた義理じゃないことは分かっているの。でも、お願い!あなたに協力してもらえなかったら、私達は……」
消え入るように、言葉が切れた。肩が震えている。

「……私達は、人殺しになってしまう……!」

「畜生!!うぜぇんだよ!だれが人殺しだ!!」
僕の横にいた男が、狂ったように吼えながら僕の腕を掴む。柚木の横の奴が、慣れない手つきでおずおずとロープを広げた。
「こいつらふん縛るぞ、手伝え!!」
「ま…待って、もう少し話を」
「いい加減にしろ!!」
パァン、と弾けるような音と共に、彼女が地面に倒れこんだ。サングラスが吹っ飛び、切れ長の大きな瞳がこぼれた
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