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くらいくらい電子の森に・・・
第六章 (2)
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柚木の「抜けたよ!」という感極まった声は、学生達のバカ騒ぎでかき消された。

大通りを塞き止めんばかりに群れるコンパ学生の真っ只中に、僕らは走り出てしまった。皆、こんな時間から切ないほどベロンベロンに出来上がってしまっている。多分、うちの学生だ。宴会が終わって万歳三唱でもしてこれから三々五々、帰途に着くなり2次会になだれ込んだりするところだろう。中央で1人、胴上げされている男がいる。
「向こうでも頑張れよー!」
「カバディ研究会を忘れるなよー!!」
などという歓声が、断続的に聞こえてくる。
「…留学する仲間の追い出しコンパかな…」
大勢の人がいる。…その安心感に膝ががくりと崩れ落ち、僕は路上に倒れこんだ。柚木があわてて僕を引っ張り起こす。
「ちょ…ちょっと!まだ終わってないんだから!!…あの、皆さーん!すみませーん!!あの、ちょっと今、変質者に…」「なぁにぃ!?変質者だぁ!?」
上半身裸の変質者っぽい学生が聞きとがめて近寄ってきた。
「ぃよーし!この中でぇー、我こそは変質者という漢は手を挙げろ!!」
「ぅい――――――す!!!」
歓声とともに、全員の手が挙がった。そして彼らはその一体感に気を良くして、隣同士肩を叩き合ったり、精も根も尽き果てた僕らをもみくちゃにしたり校歌を歌ったりと大騒動を始めた。一般人もちらほらと通ったが、巻き込まれるのを嫌がって足早に通り過ぎていく。

…路地から、1人の男が音もなく姿を現した。僕は…もう動けない……

「だめ、皆酔ってて話を聞いてくれない!」
「…柚木、逃げてくれ…」
「…もう、無理……!」
柚木の声がうわずっている。…その後、軽い浮遊感とともに、柚木が崩れ落ちた。寄りかかっていた僕は、そのまま一緒に倒れこむ。首筋に柔らかい髪の感触をおぼえ、鼻腔に柑橘系のコロンの香りがふわりと届いた。…一拍おいて、柚木が肩をふるわせながら、静かにしゃくりあげ始めた。

――激痛で気が遠くなりそうなのに、頭の芯ははっきりと冴え返りはじめた。

さっきまで胴上げされていた男が担ぎ下ろされ、男の前に酔っ払い学生がずらりと2列並んで人間アーチを作り始めた。
「ヘーイ、坂上!ヘイヘイ!!」
胴上げから解放されて、まだふらふらしている坂上を、二人のヤニくさそうな男が人間アーチに押し込む。坂上を押し込まれた人間アーチは、彼が通り過ぎると即座に瓦解してアーチの前に回りこんで再びアーチを作った。その繰り返しで坂上はなかなかアーチから解放されない。目の前に繰り広げられる平和な学生生活と、僕らのこの理不尽な危機。絶望を通り越して、笑いがこみ上げてきた……

僕の肩にかかっていた髪が、びくりと震えた。
振り向くと、柚木の肩を無造作に掴む、汚らしい掌。


――お前が、柚木に触るな!!


もう
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