空白期(無印〜A's)
第二十三話 裏 前 (アルフ、デビット、なのは)
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アルフは、目の前の現状に困り果てていた。今日は、翔太が温泉旅行に出発した日だ。前日まで色々我侭を言いながら、半分瞳に涙を浮かべながら、翔太に旅行に行くなと訴えていたフェイト―――もとい、アリシアだったが、なんとか翔太がアリシアを納得させたはずだった。
『はず』というのは、昨夜は確かに納得していたはずなのだが、今朝になるとまた再発していたからだ。布団からは出てきて、身だしなみも整えているのだが、まるで拗ねたように翔太の言葉に反応することはなかった。それでも気になるのか、翔太の視線を盗むようにちらっ、ちらっ、と翔太の様子を伺っていたが。
その様子が、自分が拗ねていることで翔太の気を引こうとしている事が嫌でも分かってしまう仕草に思わず笑いがこみ上げてきたものだ。しかしながら、その仮面を被っていられたのは、翔太が家から出て行く直前までだったようだ。
本当は気になるのに気にならない振りをしていたアリシアだったが、翔太が出発する直前に弾けるように玄関まで飛び出したアリシアは、別れを惜しむように翔太に手を振っていた。翔太の母親の影に隠れていたのはアリシアの最後の意地だろう。それさえも、アルフにとっては、可愛らしいと思える仕草に他ならなかった。
翔太が出発した車が見えなくなるまで見送っていたアリシアだったが、やがて車が見えなくなった頃、翔太の両親に促されるように家に入った。それでも、アリシアの瞳が翔太の消えた方向を最後まで見ていたことをアルフはしっかり見ていた。
翔太を見送った後、アリシアは翔太が本当にいなくなってしまったことに不貞腐れたようにソファーの上で膝を抱えながら、興味もないはずのテレビを見ている。アルフは、どこか寂しそうにも見える主を見守るようにアリシアが座るソファーの近くに座っていた。
何をするわけではない。ただ、そこにいるだけ。
―――誰かが隣にいる。
その事実がアリシアの寂しさを少しでも癒すことを願って。だが、それ以上のことはできない。それ以上、何ができるのかわからない。今、何を話しかけてもアリシアの耳には聞こえないだろう。アリシアと繋がっているラインがアリシアの言いようのない寂しさを感じるだけにアルフにはそれがはっきりと分かった。
アリシアとアルフの間には、テレビから流れる乾いたような笑い声だけが響く。酷く居心地が悪い。しかし、主の寂しさを感じている以上、アルフにはこの場から逃げるという選択肢はなかった。居心地が悪かろうが、この場にいることは決定事項だ。
そんな、二人に気づいたのだろうか。外で洗濯物を干していたはずの翔太の母親が空になった洗濯籠を持ったまま、アリシアに近づき、ゆっくりとアリシアの隣に座った。
「あらあら、寂しそうな顔して、どうしたの? アリシ
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