空白期(無印〜A's)
第二十三話 後
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ること二時間近くで、ようやく海鳴の町につく。どうやら最初に僕の家に行ってくれるらしい。それが一番効率がいいようだ。
「本当にありがとうございました」
「いや、こちらとしても楽しかったよ」
荷物を下ろしてもらった僕は、車内に残ったデビットさんと梓さんに最後の挨拶をしていた。最後が閉まらなければ、せっかくの楽しい思いでも、後味の悪いものになってしまうだろうから。だが、僕の挨拶に、やはり似合わないなあ、というような感想が見える苦笑をデビットさんは浮かべている。
「そういってもらえると嬉しいです」
「本当だよ? また、サッカーについて話せると嬉しいね」
「機会があれば」
そんなまるで社交辞令のような言葉を最後にして、デビットさんたちの車は今度はすずかちゃんを家に送るために再び発進した。すずかちゃんとは明日の学校で会うことを約束して。僕は、彼らの車が見えなくなるまで見送った後、自分の体ほどあるボストンバックを抱えて、自分の家のドアに向かう。
さて、手をかけて、ドアを開こうとした瞬間、逆に自動的にドアが開いた。
―――え?
そんな風に驚いていると開いたドアの向こう側から弾丸のように突っ込んでくる少女が。その少女は、ツインテールにした金髪をなびかせながらタックルのように僕にぶつかってきた。それは、相手が手加減したのか分からないが、何とか彼女を認識して、ふんばった甲斐があったもので、彼女―――アリシアちゃんのタックルの衝撃に耐え切る事ができた。
僕の胸に顔を埋めたアリシアちゃんは、しばらくそれを堪能するようにうずめた後、顔を上げて―――行くときの不満顔は何所へやら、笑顔で僕を迎えてくれた。
「おかえりなさいっ!」
ふと、アリシアちゃんから視線を外してみれば、玄関にはアリシアちゃんの態度に苦笑しているアルフさんの姿も見えた。彼女もきっと苦労してくれたのだろう。まあ、僕としては、行くときはふくれっ面だったアリシアちゃんがこうして笑顔で迎えてくれたことが嬉しいのだが。だから、僕も笑顔でアリシアちゃんに応える。
「うん、ただいま」
―――こうして、僕の二泊三日の温泉旅行は、つつがなく終わりを告げたのだった。
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