暁 〜小説投稿サイト〜
その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#13 "Rock decides it is high time for a show-down"
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騒ぐ心を押さえ付け、沈黙を保ちながらロックの口から出てくる言葉を待った。奴が漸く言葉を発したのは、くわえていた煙草が根元近くまで灰になってからだった………


















Side ロック

気圧されるな。

腹に力を入れて、しっかり立て。一旦目を閉じて、両の拳を握り締めながら自分で自分に言い聞かせる。

ここで逃げるな。一歩も退くな。

再び両の眼を押し開き、目の前に立つレヴィと改めて向かい合う。

車に戻って来たレヴィに促されて、連れて来られたのは入り組んだ路地裏を抜けた先にある空き地だった。
遠くに見えるのは古ぼけたトラックと積み上げられた土砂。
多分想像するに何か工事の予定でもあったんだろう。
元々この街は第二次大戦中に旧日本軍が軍港として開発しようとしたらしい。
大戦終結後は見棄てられたかのようにしばらくは寂れた港街のままだったようだけど。
だが、いつしかこの街は変質していった。
タイ奥地の生産地から、諸外国へ麻薬を運ぶための一大供給拠点へと。
複数のマフィアが連携して統治するこの街は、基本的に"マトモ"な企業は進出出来ない。

そう。どんなに内側でいがみ合っていたとしても、外敵に対しては一致して事に当たる。 それはどんな国や組織でも共通して持つ防衛本能とでも呼べるものだろう。
この街を一つの生命体と考えると、そこに巣食う犯罪組織のメンバーは抗体とも言えるか。

"情報は隠匿されてこそ価値がある"

いつだったか『イエロー・フラッグ』で飲んでた時に聞いた言葉だ。
さて、発言の主はゼロだったかベニーだったか………

実際俺も昔の仕事柄、多少は外国の危ない街も幾つか知ってはいた。
けどロアナプラなんて街は全く知らなかった。
もっともこれは俺の無知故というより、この街の住人達の尽力故らしい。
自分達の暮らし易い居場所を護るため、彼等は極力情報が流出し過ぎないよう抑制してきたらしい。
その為、この街は裏の世界ではとことん有名ではあるが、明るい光が当たる世界ではただの何処にでもあるアジアの都市という位置付けしかされていないのだ。

時には海外企業が支社工場を建てようと乗り込んで来ることもあるらしい。
嘗ての植民地支配さながらに現地の安価な人件費を当て込んで、間接統治を目論んでいるのだろう。この辺りの図式は今も昔も変わらない。
支配するものと支配されるもの。搾取する側と搾取される側。征服者と被征服者。
ありきたりと言えばありきたりな関係だ。

もっともこのタイという国は他のアジアの国とは違う。形式的とは言え独立を保ち続けてきた数少ない国だ。
今になってその一都市であるロアナプラが、諸外国の進出を阻んでいるというのも不思議な因縁
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