第一話 刻限その八
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「こんな夜に道の真ん中にいるなんてな。さて」
クラクションを鳴らそうとした。だがその時だった。
「くっ!死にたいのか!」
何と影は牧村の運転するサイドカーに対して向かって来たのだった。彼はそれを見て慌ててハンドルを右に切った。
「あいつ・・・・・・只の馬鹿じゃないのか!?」
彼はこの時は自分の中にある常識の中でこう考えた。人間は己の中の常識の範囲内で考える。それは彼もまた同じであった。
それでこう考えハンドルを切った。影は何とかかわしたが牧村はまずサイドカーを止めた。そしてそのサイドカーから降りて影の方に対して怒鳴ったのだった。
「おい、この馬鹿!」
彼にしては珍しく感情的になっていた。それは自分でもわかっていた。
「危ないだろうが。何を考えているんだ」
「危ない」
「そうだ」
牧村は怒る目でその者に対して言った。
「こんな真夜中に道路の真ん中でぼーーーーーっとしているなんてな。どういうつもりだ」
「どういうつもりもない」
ここで相手は不意に妙なことを口にしてきた。
「別にな」
「!?何だこいつ」
牧村はすぐに相手の様子が妙なことに気付いた。
「どういうつもりもない。何が言いたい」
「何も言いたくはない」
また相手は変わった言葉を出してきた。
「別にな。ただ」
「御前、何が言いたいんだ」
相手の妙な様子にどうしても疑念を拭えずに問い返した。
「さっきから。頭がおかしいのか」
「おかしいも何もない。俺は」
「俺は?」
「最初からここにいた」
また奇妙な言葉が出された。
「ここにな。何故なら」
「自殺志願者か?それなら一人で首をくくるなりして」
「自殺?何だそれは」
またしても妙な言葉が出された。
「自殺。聞き慣れない言葉だな」
「こいつ、まさか」
頭がおかしいのではないかと思った。しかしそれは違った。何故なら頭がおかしい等といた言葉は相手が人間に対しての言葉であるからだった。
「俺は。殺すだけだ」
「殺す・・・・・・」
「そう、人を」
影の形が変わっていった。それまで人のものだったのが耳が生え目が爛々と輝きだした。闇の中でその目が赤く光っているのが見えた。
「殺し喰らう。それが俺のやること」
「こいつ、一体」
思わず身構えた。しかしその瞬間に相手は牧村に対して飛び掛って来た。それはどう見ても人間の動きではなかった。
「喰わせろ」
「くっ!」
後ろに飛び退き相手の襲撃をかわす。それは何とかかわしたが一撃を受けた。右の爪の一撃を自身の左肩に受けてしまったのだ。
服が裂け肩も切られた。そこから血が出る。
「つうっ・・・・・・」
「かわした」
左肩を押さえる牧村に対して相手は言ってきた。サイドカーのライトに照らされるその相手はやは
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