第六話 大天その一
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聞いても相変わらず表情をこれといって見せることのない牧村であった。元々階級や身分にこだわる男ではないのだ。これは当然だった。
「それでだ」
「うむ」
「その上が下の第二階級じゃが」
「それは一体」
「前に話したかのう」
博士はここで少し己の記憶を辿った。
「ほれ、大天使じゃが」
「大天使か」
「アークエンジェルというのじゃ」
キリスト教での正確な呼び名も彼に教えた。
「天使よりさらに上の力を持っておる」
「それは一体どういったものだ?」
「それがのう」
しかしここでは残念そうに首を横に振る博士であった。
「わしにもわからんのじゃ。まだな」
「わからないのか」
「済まんのう」
「別に謝る必要はないが」
別にそれにはこだわることのない牧村であった。
「まだ文献で読んでいる最中だな」
「そうじゃ。しかしな」
博士はふと手元の木簡に手をやって述べてきた。
「一つ気になることがあった」
「気になること?」
「古代の中国の文字じゃがな」
「甲骨文字か?」
「それとはまた違う」
殷、正確に言えば商の時代に使われていた文字である。骨や亀の甲羅に書き込みそこから占いを行って政治に使っていたのである。中国の最初の文字だとされている。
「商の文字と周の文字はまた違うからのう」
「違うか」
「昔の中国は国ごとによって文字が違った」
これは事実である。
「始皇帝の統一で文字も統一されたのじゃよ」
「貨幣や度量衡を統一したあの時にか」
「その通りじゃ。それよりも以前の文字でのう」
「かなり古いのはわかるが」
「その文字で気になるものがあったのじゃ」
また牧村に対して語る。
「天を表わす文字が何度か見えるのじゃ」
「天!?」
牧村はその言葉に目を少し鋭くさせた。
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