第四話 改造その十二
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「生憎な」
「だったらいいけれどね」
「それでだ」
話を一旦切ってそのうえでまた尋ねてきた。
「何の用だ」
「今時間空いてる?」
それに応じてこう尋ねる妹だった。
「今。どうなの?」
「空いていると言えばどうなるんだ?」
「ちょっと来て欲しいのよ」
要するに迎えの催促だった。
「ちょっとね」
「何かあったのか」
「塾が終わったんだけれど」
「それで。迎えに来て欲しいのか」
「そういうこと」
いつもと同じことだった。送り迎えは最近よく彼がしている。当然そのサイドカーの横に乗せて送り迎えをするのだ。未久はそれが大好きなのだ。
「いいかな、それで」
「別にいい」
ぶしつけなのは親切な時でも同じだった。
「それならな。今から行こう」
「御願いできるのね」
「丁度今は暇だ。だからな」
「そう、よかった」
兄の言葉を聞いて笑顔になるのが電話からもわかった。
「それじゃあ。塾の入り口で待ってるわね」
「ああ。じゃあな」
「うん。あっ、待って」
ここで不意に兄を止めてきた。
「言い忘れたことがあるんだけれど」
「んっ!?何だ」
「お兄ちゃん今何処なの」
彼の場所のことだった。それを聞き忘れていたのである。
「大体ここまで何分位で来られるかな」
「今橋だが」
「ああ、あの橋ね」
橋と言えばわかる。二人にとってはそれだけ馴染みの場所なのだ。
「あそこね」
「そうだ、今そこにいるが」
「じゃあ十五分位?」
未久は少し考えてからこう述べてきた。
「それだと」
「それはどうかな」
「だってサイドカーでしょ」
サイドカーは普通のバイクと比べてスピードが出ない。それは重量のせいである。側車が影響しているのは言うまでもない。そのせいで重いのだ。それが当然ながらスピードにも影響しているのだ。
「だったらやっぱり」
「安心しろ」
しかし彼は妹に言う。
「すぐに来てやる」
「スピード違反はしないでよ」
兄が結構飛ばすのを知っての言葉だ。運転も冷静なのだが速度はかなり出すのだ。だがそれで捕まったことは一度もないのもまた事実だ。
「それはね」
「わかっている。それは気にするな」
「だといいけれど」
半信半疑といった感じの声だった。
「とにかく。十五分ね」
「十分か」
ここで彼は言うのだった。
「それ位だな」
「そこから十分!?」
「そうだ」
「無理でしょ」
すぐに答える未久だった。声が驚いたものになっていく。
「幾ら何でもそれは」
「若しかしたら半分かも知れない」
「半分ってことは七分半」
ただ単純に十五分を二分しただけだがそれだけで相当な時間になってしまっている。
「無理よ、それは」
「来たらどうする」
「警察にも捕まらず
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