第四話 改造その九
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「そして今は」
「魔物として来たのだな」
「その通り」
言葉と共にヘルメットが切り裂かれた。そこから顔を出したのは。
やはり異形の顔であった。昆虫の、しかも凶悪で鋭利な緑のものだった。目が異様に大きく口は禍々しい形に歪に光っていた。その虫とは。
「蟷螂か」
「蟷螂人と呼ぶがいい」
こう牧村に述べてきたのだった。
「それが一番呼び易いのならな」
「ではそうさせてもらう」
牧村はヘルメットを脱ぎつつ彼に答えた。脱ぐと共にそれをサイドカーのボックスに放り込んだ。ヘルメットはすとんとその中に収まった。
それが収まってから彼は両手を拳にした。そしてその二つの拳を胸の前で撃ち合わせると。白銀の光がそこから起こり全身を包み込んだ。その中で彼は今天使となったのだ。
「・・・・・・行くぞ」
言葉と共に右手を一旦開き握り締める。それが合図となった。
まずはその右手に剣を出し左に振り抜く。しかしそれは無理だった。
「くっ!?」
「ふむ、右利きか」
蟷螂人はそれを見て冷静な声で述べただけだった。
「どうやらそれが不幸になったな」
「くっ、しまった」
サイドカーは左に側車がある。そのうえ右手で左に振ったのだ。それならばリーチに問題が出る。幾ら身体を捻ったとしてもだ。
蟷螂人はそれを利用した。すっと左にバランスを移しその剣をかわしたのである。
「剣捌きも身のこなしもいいのだがな」
「ならば」
「生憎だがこちらもやられるつもりはない」
態勢を立て直そうとした髑髏天使に言ってきた。
「何しろ。俺は御前を倒す為に来たのだからな」
そう言うと両腕を変形させてきた。それまで人だったものを蟷螂に変えてきた。鋸を思わせる邪悪な刃が二つ、陰惨な光と共に現われた。
その刃を出すと一旦バイクから跳びサイドカーの側車に移ってきた。そしてその上に立ち髑髏天使に蟷螂を振り回してきたのだった。
「くっ!」
「さあ、どうする」
蟷螂人は彼を襲いながら問うてきた。
「運転を止めるか、それともこのまま俺に首を落とされるか」
実際に彼は髑髏天使の首を狙ってきていた。髑髏天使はそれを右の剣で受け止め左手でサイドカーの操縦を行っているがそれにも限度があった。
「どちらを選ぶ」
「うう・・・・・・」
「それとも」
その緑の、中央に青を中心とした虹を思わせる光を放つ目が陰険に光った。
「俺に喰われてみるか。頭から」
「悪いが喰われる趣味はない」
左から来た蟷螂を剣で弾き返した。
「生憎だがな」
「ほう。それではどうする」
「こうさせてもらう」
そう言うとまずは剣を一閃させた。しかしそれは特に狙いを定めたものではなかったので蟷螂人にあえなくかわされてしまった。
「この程度なら」
何ということはない。
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