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髑髏天使
第三話 日々その十四
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「それが上手く活きているわよ」
「運動神経か」
「高校まで陸上部だったじゃない」
 実はそうだったのだ。四〇〇メートルでインターハイに出たこともある。高跳びもまた得意であるし短距離とは正反対だが長距離もできる。彼女はこのことを今彼に言ったのだ。
「だからさ。動きは悪くないわよ」
「それとこれとは別だがな」
「別かしら」
「剣の捌きはそれとはまた違う」
 言いつつ休みなく剣を使う。今は突きをメインに行っている。
「数しなければ。身体が覚えはしない」
「身体がねえ」
「それでやっと戦える」
 これは失言だった。
「その時にな」
「戦う?」
「いや」
 牧村はすぐに自分の失言に気付いた。それで言葉を打ち消したのだった。
「何でもない。気にするな」
「早速試合を考えてるのね」
 しかし未久はこう捉えていた。彼女はただ彼が試合に出るとだけ思っていたのだ。これは彼女が髑髏天使という存在を知らないからだった。
「凄いじゃない」
「試合か」
「だって。フェシングやってるじゃない」
「ああ」
「だったら試合に出るじゃない。違うの?」
「そんなところだ」
 こう言って誤魔化した。
「今はな」
「そうでしょ?だったら試合頑張ってね」
「わかった」
「下手な負け方したら駄目だからね」
 急に妹の声が厳しいものになった。
「勝って来てね」
「俺は勝つ」
 突きから振りに戻る。縦横に振っているようでそこには型があった。
「安心しろ。それはな」
「わかったわ。じゃあ頑張ってね」
「必ずな。帰って来る」
 今度も失言だったが未久はこれにも気付かなかった。髑髏天使としての兄を知らないからこそ。だからこそ気付くことはなかったのだった。
 妹との話の数日後牧村はまたサイドカーに乗りハイウェイを進んでいた。進む先はもう決まっていた。そしてそこにその目標が立っていた。
「早かったな」
「早かったか」
「もう少しかかると思っていた」
 彼はサイドカーを止めてそこから降りる牧村に声をかけてきた。その前に堂々とした構えで立っているのだ。彼に立ちはだかるようにして。
「どうやら。髑髏天使だけはあるな」
「髑髏天使か」
「そうだ。五十年に一度だけ現われ我々を倒すという髑髏天使」
 牧村をこう呼んでみせるのだった。
「それになるだけはある。見事だ」
「見事か」
「強くなったのがわかる」
 サイドカーから離れ足を進めていく彼に対してまた告げてきていた。
「はっきりな」
「少なくとも御前と戦えるだけのものが備わったと見ているのか」
「その通りだ」
 蛇男は右手に鞭を出してきた。あの数匹の蛇の鞭を。
「顔つきが変わった。完全にな」
「顔でわかるものなぞない」
 牧村は足を止めた。そうして蛇男を見据え
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