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弱者の足掻き
十話 「登っているのか降りているのか」
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「まあそういうわけだから頼むよお前ら。後で何かやるから」
「もっと肉くれ肉!」
「オレも食べてみたいからそれでいいや」
「オレも何か食いたいから作ってくれよ」
「私も食べてみたいなー」


 どいつもこいつも安い礼で助かる。後で適当に作って持ってきてやろう。
 
 






 友人の家に泊まる。仲の良い者同士なら経験したことのあることの一つだろう。
 家に招くや家に遊びに行く、というのよりも上の行為。無防備を晒し共に就寝をするという以上それは当然だ。
 それはつまり相手との中がいいということを示す指針でもあり、保護者からしたら心配でもあると同時に嬉しさもあることが多い。
 その例に漏れず、なのかは定かではないが庵のおっさんもカジ少年の家に泊まりに行くという事を聞き二つ返事で了承してくれた。


「迷惑かけてくんなよ。文句言われるの俺なんだからよ」
「大丈夫ですよ」
「白の方は心配いらないがお前はなぁ……」


 泊まりに行く為の荷物も少ないラフな格好をしている二人を見ておっさんは酷く失礼なことを言う。

 
「まあいい。変なことして愛想つかれねぇよにしろよ」


 一人の食卓でおっさんは酒をチビチビと飲みながら猪のチャーシューを齧り視線を向ける。


「仲良くしてくれるダチがいるってのは大事だ。お前にそんな奴がいるってのは驚いたが、ホントにそんな奴がいるなら仲良くしとけ。少し安心したぞ」


 カジ少年たちと最初に知り合った理由はなんだっただろうか。確かなんでもない理由だった気がしたが思い出せない。
 けれど良いやつだとは知っている。いや、知ったのか。


「大丈夫ですよ。ありがとうございます」
「そうか」
「はい。じゃ、行ってきます」
「行ってきます庵さん」
「おう行って来い」



 外に出て少し時間を置き、そして戻って音を立てずに屋根へと登り白とともに部屋に入る。
 隠しておいたカバンとホルスターの中身に間違いがないことを確認して取り直ぐさま部屋から出る。これが無くては意味がない。


「そういえばさ白、カジ達と知り合った理由って覚えてるか?」
「覚えてますよ」


 火車から渡された紙を見ながら歩く夜道で飛ばされた問を受け白が静かに語る。


「確か神社の階段でぶつかったんですよね」
「……ああ、そういやそんな事あったな」


 この国に来てまだ間もない頃に街に何があるのかと歩き回っていたことがある。それで神社に行ったときに階段の反対側を走る少年とぶつかった。ふらつきから戻ったその少年はこちらが文句を言うよりも早く捨て台詞を吐いて逃走したのだ。

『おい何走って――』
『あぶねぇだろバーカ!』

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