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弱者の足掻き
十話 「登っているのか降りているのか」
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言うレベルアップでしかないのだ。
 問題は俺が保つかだが、まあ、大丈夫だろう。無責任なことには自信がある。


「知り合い……というか仲間なんですけど、後で連れてきていいですか? 信用できる奴なんで」
「んー、まあ信頼できるならええで。仲間の信頼はその人の信頼でもあるしな」


 火車は済ました顔で言っているがつまりそいつに問題があれば俺の信用も傷つく、と暗に告げられたわけだ。


「その辺は大丈夫です。俺なんかよりずっと真面目で、素直なやつですから」


 店を出て帰途につく。
 既に季節は秋。肌寒さを感じさせる夜風に揺られ息を吐きながらこれからの事を思う。もう振り返るには遅い。覚悟を決めなくてはならないがそれが嫌でつい回り道をしたくなる。
 『誰かの為に』 そう言えたら楽できっとそいつは人を思いやれる善人だ。
 『自分の為に』 そう言えたらこれもまた楽で割り切れるだろう。
 いつになったらそう割り切れるのか。その答えが見当たらない。
 いつまで経っても自分は曖昧で、けれど理由を押し付けている。


「……帰るか」


 答えなど見つからないまま歩く先を見て見ぬ振りする自分はどこに辿りつけるのだろう。












 道具の手入れというのは大事だ。刃物の切れ味なら言わずもがな。サビや湿気など道具の力を十全に発揮するにあたり手入れというのは重要な役割を果たす。
 例えば刀。白木の鞘に入っているのは錆を防ぐ意味もある。素手で触りなどしたら持ち主に怒られることは必須だろう。
 刃物の手入れといえば基本的には研いで油を塗ること。油膜は空気による酸化から守ってくれる。
 例に漏れず俺と白は自室で手持ちの刃物の手入れをしていた。
 朝っぱらから床一面に形も違う大小様々な刃物が転がっている様は一般人から見たら通報必死な有様だろう。火薬とかもある。発見を防ぐために一応ではあるが鍵はかけてあるしそもそも登ってくる足音でわかるので問題はないが。


「そっちは終わったかー?」
「一通り研ぎ終わったので仕舞ってます。そっちはどうですか?」
「こっちも終わりだ。意外と楽しいなこれ」


 砥石から上げたチャクラ刀を見ていると水に濡れキラリと光るその刃に思わず見入ってしまう。どんな切れ味がするのかつい指を当ててスっと引きたくなって……


「イツキさん!」
「やらねぇから叫ぶな煩い」


 ハサミとかならまだしもこんな切れ味が良さそうなのでするわけがないだろう。少し危なかったけど。
 手入れが終わったものを仕舞い、その内必要なものをカバンとホルスターに入れて押入れの奥や天井裏に隠す。


「あの、ホントにするんですか」


 不安を瞳に浮かべ白が
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