SAO編
十話 風見鶏亭の夜
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何より、許されない様な事をしたとリョウが言った以上、それなりに恐ろしい事を想像して警戒するべきた。……最悪の事も含めて。
それでも、シリカはリョウを信用したかったのだ。
さっき大通りで、不安に押しつぶされそうになっていた自分の頭をそっと撫でてくれた時、まるでリョウの優しい心が直に伝わって来るような、そんな感覚がした。
あれが演技だと言うのなら、最早リョウの演技は神の域だろう。
それに……
「それに、私がこんな事言っていいのかは分からないですけど……自分のやった間違いを哀しめる人が、普通のオレンジの人たちと何もかも一緒だなんて、私は思いません」
「……!」
リョウは今度こそ驚愕したようで目を見開いたが、シリカの真っ直ぐな目線を見て、それは柔らかい微笑に変わった。
「はは、俺が慰められるとはなぁ……うん、元気出た。ありがとよ、シリカ。」
その時のリョウの笑顔を見た瞬間、シリカは自分の顔が急激に熱くなるのを感じた。今更ながら、自分がしている事の大胆さに気が付いたのだ。わけも分からない内に心臓の鼓動が速くなる。胸が痛い。
慌ててリョウの手を離して両手で胸の中心を抑える。しかし、依然として胸の痛みは消えない。
「ん?……どした?」
「な、なんでも無いです!あ、あれぇ?料理遅いなぁ……!?」
若干言い訳がましいと思いつつも、シリカは話をそらすためにそう言った。が、
「なんだぁ?どうしたどうした〜?」
「んむ、や、止めてくださいよ〜」
シリカの態度から何かを察したのか、頭をくしゃくしゃと楽しそうに撫でてくるリョウにシリカは小さく抗議するが、それが何となく楽しくてしばらくそのままじゃれていた。
さて、そのまま突入した今日の夕食は、シチューと黒パン。そして、件のチーズケーキであった。
シリカの今後のデザートが掛った選定の結果はと言うと……
「おっ、これは中々……」
「どうですか!?」
「うむむ……触感は8層のあの店に似て、いやいやしかし……」
「………………」
リョウは難しい顔をして、味を見定めているようだ。シリカは緊張しながらそれを見守る。
そして突如、リョウがそれまで閉じていた目を大きく見開いた。妙な迫力に満ちたその表情に、シリカは一瞬たじろいだ。
「うん、よし。合格!」
「本当ですか!?」
「おう、今度俺のお進めの店連れてってやるよ。おごりで。」
「わぁ!やたー!」
嬉しさのあまり、諸手を上げて喜ぶシリカにリョウはさらに嬉しい提案をして来た。
「その時にはピナも一緒だな。餌でも買ってやるか。」
「はい!ありがとうございます!」
「さて、そうと決まれば明日は張り切って行くとしよう。」
「はいっ!」
と言う訳で、この件が終わったらシリカはケーキを奢って貰える事となった
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