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SAO─戦士達の物語
SAO編
十話 風見鶏亭の夜
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俺は‘法’だと思ってんだよな……」
「法……ですか?」
「ああ、考えてみりゃ当たり前なんだけどな。法ってのは抑止力だ。それを犯せば罰が与えられる。だから人間は、最後の一線を越える事を理性で抑える事が出来るんだ。自分に被害が及ぶから」

[この世界で人を殺しても、本当に死ぬかなんてのは分からない。だから、この世界での殺人は罪にはならない。]
これは、この世界で殺人をするオレンジプレイヤー達が殺人の理由としてしょっちゅう上げる理由だと聞いたことが有る。それはつまり、この世界で殺人はしてはならない事だが、強制的に禁止する物は無いと言う事。

「けど、この世界に法は無い。じゃあ、ストッパーが無くなった瞬間にそれらを簡単に犯す奴らは何なんだろうな?」
二度目の問い。シリカにはリョウの言いたい事が分かった気がした。

「多分、この世界でそういう事をする連中は現実でも自分に実害がなければそう言う事をする、根の腐った奴なんだろうな…………正に人間の本質が見えてるってわけだ。」
その吐き捨てる様な言葉と威圧感に気圧されたシリカにリョウは、すまんすまん。と軽く笑って謝る。

しかし、

「まぁ──」
言葉を続けたリョウの瞳をみたシリカは驚きを隠せなかった。その時のリョウの瞳には先程とは比べ物にならない様な深い、何処までも深い哀しみの色がはっきりと見てとれたからだ。

「俺も、人の事言えた義理じゃねえんだよ。人助けなんて殆どしないし、何より──」
次に続く言葉が、何故だかシリカにはには分かった気がした。

「──俺もそのクチだしな。」

「リョウ、さん……?」
シリカは少し驚いたが、何となくでも予想が出来ていたためだろう。そこまでではない。

シリカは、目の前の浴衣姿と言う奇妙な青年が持つ、その愉快な姿に似合わぬ深い苦悩を何となくだが感じ取っていた。
何か言わなければと思うのだが、恨めしきは語彙の少なさか、言いたい事を上手く形にする事が出来ない。
その代わりと言おうか、シリカはテーブルの上に拳となって置いてあった自分より一回り大きなリョウの右手を、両手で無意識に包み込んでいた。

「リョウさんは良い人です。あたしを、助けてくれましたから」
リョウが驚いて一瞬硬直するが、直ぐに力が抜けるとどこか自嘲気味な笑みを浮かべる

「シリカって以外に度胸あるんだな?今のは結構嫌われる覚悟で言ったんだぞ?」
「度胸なんて必要ないです。私はリョウさんを信じてますから」
即答したシリカにリョウは少し驚いた様な顔をしているが、シリカは自身は本気でリョウを信用していた。

それがある意味危険な事なのは分かっている。
自分はこの青年について知らない事が多すぎるし、これまでのやり取りが全て演技だったという可能性も無い訳ではない。

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