SAO編
十話 風見鶏亭の夜
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事)が有ったせいで、固くなった心と疲れのたまった身体をゆっくりと溶かすように癒してくれる気がした。
飲みながら、ふと思った事を口にする。
「でも、《ブラック・ビター》ってコーヒーみたいな名前ですね。」
「あー、駄目だ。コーヒーは駄目」
「え?コーヒー飲めないんですか?」
「うむ、無理だ。あの苦味の塊みたいな黒い液体を上手いと思える奴の気がしれん」
至極真面目な顔をしてそう語るリョウを見て、またしても笑いが込み上げてくる。
此処まで、年上のお兄さんと言うイメージが強かった彼だが、コーヒーが飲めないという以外に子供っぽい発言で何故か一気に親近感がわいた。
森で、自分を助ける理由を語った時に見せた恥ずかしそうな脱力した様な表情を見せた時にも思った事。
変わっているが面白い人だ。なにより。
『この人は、悪い人じゃない』
シリカは、今はこの人に助けられて良かったと思えていた。
だが、安心した矢先、シリカの中に先程のロザリアとの会話が思い出される。
『あら?あの‘トカゲ’、どうしちゃったの?』
『あらら、もしかしてぇ……?』
『──あんたのレベルで攻略できるの?』
『あんたもその子に‘たらしこまれた’口?』
全てのセリフが、まるで他人の不幸を喜んでいるとしか思えない。嫌な笑いと共に放たれていた。
本当に、嫌な笑いと共に。
「……なんで……あんな意地悪言うのかな……」
気が付くと無意識にそう口に出していた。とたんにリョウがどこか憐れむような表情になる。
「シリカって、此処に来る前にMMOやったことは?」
「いえ……」
シリカは首を横に振る。
「成程な──まぁ、どんなゲームでもやり出すと人格変わる奴ってのはいるんだよ。善人になるか悪人になるかは人によるんだがな。まぁ元々、ロールプレイってのは他人になりきって、その人物の人生なんかを体験するって意味だから、間違っちゃいないんだが、」
そこでリョウは一度言葉を区切ると、真剣な表情になる。
「知ってのとうり、このゲームは全く勝手が違う。誰も顔を隠せないし、他人の目から隠れられない。自分自身の姿で生きるしかない。」
「それなのに、いくらなんでも他人の不幸を喜ぶだとか、強盗染みた事するとか、果ては殺しをする奴が多すぎるんだよな」
そう言って、シリカの事を真っ直ぐに見るリョウの目は苦々しさと同時に、どこか悲しみをたたえているようにも見えた。
「でもな、そんな奴らでも、少なくと現実ではまともな人間として生きていたはずなんだ。なら、いま殺人まで犯している奴らと、そいつらの現実の姿との境界線はどこだと思う?」
突然問われ、シリカは戸惑いながらも考えたが、直ぐには答えが出なかった。
考え込んでいるシリカにリョウは口を開く。
「
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